退化の流れに逆らうあがき

先週末の雪


私はもともと濫読家だし、ドイツに来てから日本語の活字に飢えているので、
機会があれば、取り敢えずは何でも読む。

或る短編集を開き、第一編「雨」を読み始めた（作者の名は伏せておこう）。
途中から、私の顔付きが険しくなる。
何だ、これは。
中島敦の「牛人」と全く同じストーリーじゃないか。

あとがきは若手のミステリー作家だったが、
まるで気付かぬ絶賛文を、陶酔して書いている。

気になって、ネットで調査してみたが、まるで埒が明かぬ。
このストーリーの発想に感嘆している人ばかりで、余計にむっとする。

業を煮やして中島敦の「牛人」の方を辿ってみたら、こちらはあっさり答えが出た。
大本の題材は、「春秋左氏伝」の記事だったのである。
そう言えば、これは彼の「古俗」に入っているから、元があるのは当然である。何も考えずに彼のオリジナルだと思っていた私の方が、迂闊であった。

それにしても。
中島敦が「古俗」と名付けたように、こちらも断りを入れておくべきであろうに。
作者がそれをしないのならば、それは解説者の役目である。
その解説者が、作家を名乗りながら中島敦すら読んでおらぬとは、片腹痛い。
（「春秋左氏伝」まで読めと言っている訳ではない。）

そもそも最近の本は、あとがきの質が如何にも悪い。
賛辞とおべっかの読書感想文をつらつら書き連ねられたところで、我々読者の益にはならぬ。
昔の本のあとがきは、読むと作者の生い立ちや作品の背景がわかって、なるほどと感心したものだが。

作家という生き物は退化しつつあるのかも知れない。


「マイスターのお道具箱」のこの記事で紹介されていた「漢字テスト」、
軽い気持ちで開いてみて・・・メラメラメラ・・・半纏を脱ぐ位、体が熱くなりました。
（いや、まだ熱があるだけか？）
うーん、最高レベルまでは達せず。風邪のせいにしておこう。
私の姉達なら、きっと最高レベルに到達してくれるのではないかな（まかせたよ！）。
それともどなたか、仇を討って頂けますか。

過去の関連記事：「日本語」

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「牛人」はこの２巻に入っている。