2008年 02月 16日
生死の岐路 |
当直の夕方頃、一人の患者さんが
「今日ちょっと血便があって、お腹も少し痛くて・・・」と言って、
散歩の後で診察室に顔を出した。
心臓手術後のリハビリに来ている、比較的若い患者さん。
診察してみたら直腸にちょっと血はあったけれど、その他は全て異常なし。
全く異常なしなのだけれど、何だか・・・。
「念のために、点滴用の針を入れましょう。
今晩一晩だけ、モニター室で眠って下さい」
と言ったら、彼は「嫌だ・・・」と、涙ぐんでしまった。
心が揺れる。
「ね、一晩だけ我慢して」と説得。
彼は頷かない。
「まあ、じゃあ、部屋に戻ってもいいですよ」
という言葉が、何度も何度も喉元まで出かけたが、
何故か私は、それを言わなかった。
粘り強く説得して、点滴用の針も一番太いのを入れて、治療室へ。
看護婦さん達の目が、「何でこんなピンピンした人を・・・」と語っている。
自分でも、悪い予感だの胸騒ぎだのは、全くなかった。
それなのに、何故か強引に彼をモニターにつないだ。
晩御飯も抜きにさせた。
それから1時間もしないうちに、突然血圧が下がり始め、
看護婦さんが私を呼びに走って来た。
血圧70/50mmHg(普通のいい値は120/80mmHg位)。
話し掛けても、反応が鈍い。
点滴を吊るし、全開にする。
血圧はどんどん下がる。
もう片方の腕にも点滴の針を入れ、こちらも全開にする。
血圧はどんどん下がる。
「救急病院に搬送!」と、救急車を手配させる。
彼の意識はどんどん遠のき、返事もしなくなる。
ベッドを傾けて、頭の位置を下げる。
血圧60/25mmHg。
もう次の瞬間には蘇生を始めねばならぬかと、観念する。
彼は心臓手術の直後で、
人工弁が2つと、大動脈も一部人工血管になっている。
蘇生というものは、かなりの力がかかるので、
どこかの縫い目が裂けたら、それまで。
点滴が2本空になった頃、血圧は少し持ち直した。
搬送に付き添う救急医も到着した。
相変わらず意識は殆どないけれど、無事出発。
彼は搬送先で、ICU(集中治療室)に入れられた。
もし、あの時、彼の涙に負けていたら、
彼はもう、この世の人ではなくなっていたかも知れない。
「人の生死を我が両肩に背負う」という事の重さが、
またしても身にしみた。

さて、これは何でしょう。
若木の支柱にしては、ちょっと様子が違う。
実はここにノスリ(鷹や鳶の仲間)がとまって、じーっと目を光らせて、
畑(写真左方)を荒らす鼠を捕ってくれるのです。
この道路沿いに点々と止まり木が立っているのですが、
多い時には数羽のノスリを見掛けます。
この木が大きく育つ頃には、こんな止まり木は必要ではなくなります。
因みに写真右方の道路が私の通勤路で、左方の道は農道です。
追記(2009年1月11日):

走行中の車窓(勿論助手席です)からなので、こんな写真ですが・・・。
右の黒い点は飛んでいるカラスです。

身じろぎもしないその姿に、「寒い中、お勤めご苦労様です」と言いたくなってしまいます。
by germanmed
| 2008-02-16 00:00
| 仕事・医療
|
Comments(14)

うう、感動しました。。。うちの父も脳内出血以来、ちょっとしたサインが多く、その度に何度家族が必死になって走った事か。。。(泣)
えっと、この柱面白いです!!私の彼、鳥が専門の生物学者です。それじゃ食えないので違う事教えてますが。。。見せますよ!喜ぶと思う。知ってるかなぁ。
えっと、この柱面白いです!!私の彼、鳥が専門の生物学者です。それじゃ食えないので違う事教えてますが。。。見せますよ!喜ぶと思う。知ってるかなぁ。

今聞いたら、やつは知っていました。チェコにもあるそう。ちょっとくやしいー(><)
★アリスさん、こんにちは。
もしあの時、違う決断をしていたら・・・と思うと、本当に手足が冷たくなる思いでした。
へえー、チェコにもあるんですか。
私がこれを初めて見たのは結構最近なんです。
鳥が専門って、面白そうな分野ですね。
もしあの時、違う決断をしていたら・・・と思うと、本当に手足が冷たくなる思いでした。
へえー、チェコにもあるんですか。
私がこれを初めて見たのは結構最近なんです。
鳥が専門って、面白そうな分野ですね。

本当に見事な判断でしたね。拍手ものですよ。
念のためって、私たちには大事なことですよね。
”ちょっと大袈裟にしちゃってごめんなさいね。”という結末がほとんどだとしても。
患者さん、早く無事に戻ってこられるといいですね。
念のためって、私たちには大事なことですよね。
”ちょっと大袈裟にしちゃってごめんなさいね。”という結末がほとんどだとしても。
患者さん、早く無事に戻ってこられるといいですね。
★TLJGさん、こんにちは。
麻酔医の皆さんは、こういう状況のプロだから、落ち着いたものでしょうね~。私は新米だし、救急の経験は余りないし、「モニターのお陰で早期発見できて、Viggoもグリーンのを入れておいて、よかった~(うるうる)」でした。
こんな術後で心臓マッサージをする破目になっていたら・・・うう。
麻酔医の皆さんは、こういう状況のプロだから、落ち着いたものでしょうね~。私は新米だし、救急の経験は余りないし、「モニターのお陰で早期発見できて、Viggoもグリーンのを入れておいて、よかった~(うるうる)」でした。
こんな術後で心臓マッサージをする破目になっていたら・・・うう。

気の抜けないお仕事、ホント頭が下がります。
この棒、最近あちこちで沢山見かけるようになりましたよね?私がこれに初めて気が付いたのは、こないだのクリスマスシーズンでした。
高速道路の脇にも、点々とずらーーぁと並んでいて、ブサードが座っていて。
私も決してカエル好きって訳ではないのです。たまたま、HNをこんな風にしてしまったので・・・ とりあえず、可愛げのあるカエル画像を使うようにはしているのですが・・・
この棒、最近あちこちで沢山見かけるようになりましたよね?私がこれに初めて気が付いたのは、こないだのクリスマスシーズンでした。
高速道路の脇にも、点々とずらーーぁと並んでいて、ブサードが座っていて。
私も決してカエル好きって訳ではないのです。たまたま、HNをこんな風にしてしまったので・・・ とりあえず、可愛げのあるカエル画像を使うようにはしているのですが・・・
★ふろっしゅさん、こんにちは。
そうなんですか、てっきりカエル大好きなお方かと思っていました。あはは。
ドイツでは実物のカエルを見かける事が少ないので、「カエル嫌い」という人は少ないですね。
私も、余り写実的でなければまずまずO.K.です。
そうなんですか、てっきりカエル大好きなお方かと思っていました。あはは。
ドイツでは実物のカエルを見かける事が少ないので、「カエル嫌い」という人は少ないですね。
私も、余り写実的でなければまずまずO.K.です。

読みながらこちらの心臓がどきどきしてきました。
その後ICUでどうなったのか気になります。直腸の血便は痔だったのでしょうか。最近娘が痔で出血するのです。食事に気をつけて水分を取るようにしているので最近はなくなったといっていますが。
その後ICUでどうなったのか気になります。直腸の血便は痔だったのでしょうか。最近娘が痔で出血するのです。食事に気をつけて水分を取るようにしているので最近はなくなったといっていますが。

お疲れ様です。
そして、素晴らしい直観力。すごいですね。
この経過から考えると、十二指腸潰瘍ですか?
患者さんのその後は、良くなりましたか?
そして、素晴らしい直観力。すごいですね。
この経過から考えると、十二指腸潰瘍ですか?
患者さんのその後は、良くなりましたか?
★Chiblitsさん、こんにちは。
翌朝ICUに電話してみたのですが、まだ原因は不明との事でした。私も知りたくて、うずうずしているのですが。
痔もちの方は、便秘を避ける事が大事です。水分と、野菜(ふふふ♪)などの食物繊維を沢山摂取して。
翌朝ICUに電話してみたのですが、まだ原因は不明との事でした。私も知りたくて、うずうずしているのですが。
痔もちの方は、便秘を避ける事が大事です。水分と、野菜(ふふふ♪)などの食物繊維を沢山摂取して。
★Liebigさん、こんにちは。
それが、どうも違うみたいなんですよ。
出血自体は全然大した事なかったらしく、でも彼の心臓はそれでもついていけなかったようです。その背後には一体何が・・・と、知りたくてうずうずしています。
それが、どうも違うみたいなんですよ。
出血自体は全然大した事なかったらしく、でも彼の心臓はそれでもついていけなかったようです。その背後には一体何が・・・と、知りたくてうずうずしています。
★その後・・・。
結局原因はよくわからないまま、心臓ペースメーカーを入れたそうです。ペースメーカーで本当に問題解決になるのか、何だかすっきりしませんね。
結局原因はよくわからないまま、心臓ペースメーカーを入れたそうです。ペースメーカーで本当に問題解決になるのか、何だかすっきりしませんね。
うーしつこくコメントを書くことになってしまいなんだか気が引けてしまうのですが、このノスリ用の棒になんだかいたく感激していまいました。
自然の力を借りて上手に共存していく。。そういうことが大事にされているお国なんでしょうか。自分たちの力を驕って目先の方法で害になるものを駆除してあちこちでそのしっぺ返しが来ているこのご時世、この方法が特別じゃなくて普通に生活に溶け込んでいることに、なんだかひとり大げさなんですが、なんだか心救われる気持ちになりました。いや、ほんとなんか感激。。
自然の力を借りて上手に共存していく。。そういうことが大事にされているお国なんでしょうか。自分たちの力を驕って目先の方法で害になるものを駆除してあちこちでそのしっぺ返しが来ているこのご時世、この方法が特別じゃなくて普通に生活に溶け込んでいることに、なんだかひとり大げさなんですが、なんだか心救われる気持ちになりました。いや、ほんとなんか感激。。
★はなももさん、こんにちは。
あのね~、私も、はなももさんちで「お!これは!」という記事が沢山あって、でもどんどん次を読むのに夢中で素通りしてしまったので、もう一度ゆっくりおさらいしてコメントさせていただこうかな~、と思っています。
このノスリの止まり木は、この地域では新しいもので、私も初めて見た時には「おおー!」と感動しました。
あのね~、私も、はなももさんちで「お!これは!」という記事が沢山あって、でもどんどん次を読むのに夢中で素通りしてしまったので、もう一度ゆっくりおさらいしてコメントさせていただこうかな~、と思っています。
このノスリの止まり木は、この地域では新しいもので、私も初めて見た時には「おおー!」と感動しました。