2022年 02月 28日
そういう仕事 |
若いロシア人の患者さんがいた。
筋肉隆々とした体に、古い銃創。
あと何ミリかずれていたら、下半身不随になっていた。
手術でも弾は取り除けなかったので、
定期的にMRIで弾の位置を確認するのだという。
「えっ、MRIいけるの?」と訊いたら、
「いける材質の弾だから」と、へらへら笑った。
他にも、酒、煙草、ドラッグ。
服を脱がせたら、タトゥーだらけ。
ナイフと思われる刺し跡が胸部に幾つも。
酒場でのナイフの喧嘩やら、ケージ格闘技選手やら、
それ迄に色々診てきていたので、
彼もどうせ何かやんちゃをしていたのだろうと思い込み、
「あなた、一体昔何をしていたのよ?!」と、笑いながら訊いてしまい、
彼の答えに笑顔が凍り付き、自分の能天気さを猛烈に恥じた。
ぼくは、兵士だったんだ。
by germanmed
| 2022-02-28 00:32
| 仕事・医療
|
Comments(10)
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燕
at 2022-02-28 03:13
x
そうなのですね
私の身近には40代で召集された祖父と、実は自衛官だったことがある父くらいですが(戦後すぐ、数年間の話で、もちろん実戦経験はない、、、はずです)
くまさんは、お医者さんとして、そのような方と身近に接しておられるのですね
身体の傷は目に見えて痛々しいですが、心の傷は、すぐに見えないだけに
見えてしまった時の衝撃というか、やり切れなさは身体の傷以上のように思います
亡くなった祖父からは、戦地での恐ろしさ、自分が殺されかけたこと、
自分も人を殺してしまったかもしれない経験を、晩年になってから繰り返しきかされました
戦場で心が傷付いて、平和な日常に戻れなくなってしまった米兵のドキュメンタリーを
昔、湾岸戦争後にテレビで見たことがあります
あの時も、自分が生きている時代に、自分が憧れた映画や音楽を創った国の自分と同世代の仲間が
国の命令一つでお互い殺しあわなくてはならないことが、割り切れない思いでいっぱいでした
そして、戦争で人生を、心を破壊されている
同じ頃に生まれて、同じように小学校に通って、E.T.やスターウォーズに心を躍らせた、自分や友人達と同じ現代人のはずなのに
学校で習った頃は遠い昔の出来事で、今の世代である自分達に戦争は関係ないと思っていましたが
今回の戦争の背景を少し知ると、2つ前の記事タイトルのように
当たり前と思っているこの世界の平和な日常が、
どれほど危ういバランスで成り立っているかを改めて思い、肝が冷えます
くまさんが 若いロシア人の患者さん とおっしゃるなら間違いなく私より若い人
甥っ子がもうじき30になりますが、もしかするとそんな年代でしょうか
あの小さな赤ちゃんだった子と同年代の子が
ナイフの傷はロシアでなのか、ドイツでなのか、そもそもなぜロシアの兵士だった人がドイツのくまさんの病院に
さまざまな疑問や仮定は浮かびますが、これからのその若者に、過去を補って余りある幸あれと願うばかりです
そして、その彼のように国の命令で傷だらけになったり、命を落としたりする若者が、
ロシアにもウクライナにも、世界のどこの国にも、これ以上増えませんように
私の身近には40代で召集された祖父と、実は自衛官だったことがある父くらいですが(戦後すぐ、数年間の話で、もちろん実戦経験はない、、、はずです)
くまさんは、お医者さんとして、そのような方と身近に接しておられるのですね
身体の傷は目に見えて痛々しいですが、心の傷は、すぐに見えないだけに
見えてしまった時の衝撃というか、やり切れなさは身体の傷以上のように思います
亡くなった祖父からは、戦地での恐ろしさ、自分が殺されかけたこと、
自分も人を殺してしまったかもしれない経験を、晩年になってから繰り返しきかされました
戦場で心が傷付いて、平和な日常に戻れなくなってしまった米兵のドキュメンタリーを
昔、湾岸戦争後にテレビで見たことがあります
あの時も、自分が生きている時代に、自分が憧れた映画や音楽を創った国の自分と同世代の仲間が
国の命令一つでお互い殺しあわなくてはならないことが、割り切れない思いでいっぱいでした
そして、戦争で人生を、心を破壊されている
同じ頃に生まれて、同じように小学校に通って、E.T.やスターウォーズに心を躍らせた、自分や友人達と同じ現代人のはずなのに
学校で習った頃は遠い昔の出来事で、今の世代である自分達に戦争は関係ないと思っていましたが
今回の戦争の背景を少し知ると、2つ前の記事タイトルのように
当たり前と思っているこの世界の平和な日常が、
どれほど危ういバランスで成り立っているかを改めて思い、肝が冷えます
くまさんが 若いロシア人の患者さん とおっしゃるなら間違いなく私より若い人
甥っ子がもうじき30になりますが、もしかするとそんな年代でしょうか
あの小さな赤ちゃんだった子と同年代の子が
ナイフの傷はロシアでなのか、ドイツでなのか、そもそもなぜロシアの兵士だった人がドイツのくまさんの病院に
さまざまな疑問や仮定は浮かびますが、これからのその若者に、過去を補って余りある幸あれと願うばかりです
そして、その彼のように国の命令で傷だらけになったり、命を落としたりする若者が、
ロシアにもウクライナにも、世界のどこの国にも、これ以上増えませんように
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m
at 2022-02-28 06:58
x
最後の答えに背筋が凍りましたよ!
読んでいく内に兵士じゃないかなぁと頭をかすめた!
やっぱりかぁと思いました!
あぁ、何ともタイムリーな出来事。
患者さん、今は、ドイツに住んでいるのだね。
読んでいく内に兵士じゃないかなぁと頭をかすめた!
やっぱりかぁと思いました!
あぁ、何ともタイムリーな出来事。
患者さん、今は、ドイツに住んでいるのだね。
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coco
at 2022-02-28 13:27
x
本当に日本にだけなら分からない事、経験できない事がいっぱいありますね。
そちらから見た日本もきっと極東の遠い国なんでしょう。
とにかく人と人との交流は大切です。
私達の年代はヨーロッパに行くにしてもすごいお金がかかりました。でも今は格安航空券で行くと時間はかかりますが往復5万円台で行ける時も有ります。
コロナが収束したら、もっと日本の若い人が海外に出てほしいものです。
こぐまちゃん達はお母さんの国に帰れるので自然と視野は広がると思います。
我の孫達は私がスペイン巡礼から送付した写真や動画がかなり刺激になり海外に行ってみたいと言っていますが、ここ2,3年は海外に簡単に出かけられなくなったのが残念です。でもまたきっと簡単に往来できる日が近づいていると思います。
私ももう一度サンチャゴコンポステーラの地に立ちたいと願っています。次回はポルトガルの道を歩く予定です。が、問題は時が私の年齢を引き連れて過ぎてゆくことです。一日20kmを歩くのは困難になってくるかもしれません。そしたら倍の時間をかけて10㎞で行きます。(笑)叩けさらば開かれん!
そちらから見た日本もきっと極東の遠い国なんでしょう。
とにかく人と人との交流は大切です。
私達の年代はヨーロッパに行くにしてもすごいお金がかかりました。でも今は格安航空券で行くと時間はかかりますが往復5万円台で行ける時も有ります。
コロナが収束したら、もっと日本の若い人が海外に出てほしいものです。
こぐまちゃん達はお母さんの国に帰れるので自然と視野は広がると思います。
我の孫達は私がスペイン巡礼から送付した写真や動画がかなり刺激になり海外に行ってみたいと言っていますが、ここ2,3年は海外に簡単に出かけられなくなったのが残念です。でもまたきっと簡単に往来できる日が近づいていると思います。
私ももう一度サンチャゴコンポステーラの地に立ちたいと願っています。次回はポルトガルの道を歩く予定です。が、問題は時が私の年齢を引き連れて過ぎてゆくことです。一日20kmを歩くのは困難になってくるかもしれません。そしたら倍の時間をかけて10㎞で行きます。(笑)叩けさらば開かれん!
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germanmed at 2022-02-28 21:24
> 燕さん、こんにちは。
特にナイフや普通の銃を使うような地上戦は、空襲やミサイルよりも更に「自分の手で」という現実感が強いのですよね。
産み育てた母がいて、訓練して自分の体を鍛えあげ、そこに容赦なく金属が食い込む。それが心を持つ、そしてfragileな人間である必要性は、一体どこにあるのか。政治家たちよ、ロボットにでも喧嘩させておけ、と言いたくなります。
特にナイフや普通の銃を使うような地上戦は、空襲やミサイルよりも更に「自分の手で」という現実感が強いのですよね。
産み育てた母がいて、訓練して自分の体を鍛えあげ、そこに容赦なく金属が食い込む。それが心を持つ、そしてfragileな人間である必要性は、一体どこにあるのか。政治家たちよ、ロボットにでも喧嘩させておけ、と言いたくなります。
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germanmed at 2022-02-28 21:27
> mさん、こんにちは。
タイムリーなのではなくて、こんな状況になったので思い出しました。
多分、医者というのはまた独特な関わり方なのですよね。
タイムリーなのではなくて、こんな状況になったので思い出しました。
多分、医者というのはまた独特な関わり方なのですよね。
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germanmed at 2022-02-28 21:36
> cocoさん、こんにちは。
そうですね。日本にいた時には想像もできなかった世界です。
有難いのは、基本的に国民を責めずに政治家個人を責める風潮です。これでロシア叩きとかになったら、それはお門違いですもの。
そうですね。日本にいた時には想像もできなかった世界です。
有難いのは、基本的に国民を責めずに政治家個人を責める風潮です。これでロシア叩きとかになったら、それはお門違いですもの。
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penguinophile at 2022-03-03 16:40
平和な国に育ってきただけに、能天気な発言をしてしまう事があるの、すごくよくわかります。
私は小学校で移民の保護者がドイツ語を習うお手伝いをしているのですが、「祖国はずっと内戦で、爆弾がしょっちゅう落ちてきたから、ほとんど学校に通えなかった」とサラッと言う人もいます。私には想像もつかない壮絶な環境で育ってきた人達がいるので、無神経な発言で相手を傷つけたり、つらい経験をむやみに思い出させる事がないよう、気を付けなければ…と思っています。
私は小学校で移民の保護者がドイツ語を習うお手伝いをしているのですが、「祖国はずっと内戦で、爆弾がしょっちゅう落ちてきたから、ほとんど学校に通えなかった」とサラッと言う人もいます。私には想像もつかない壮絶な環境で育ってきた人達がいるので、無神経な発言で相手を傷つけたり、つらい経験をむやみに思い出させる事がないよう、気を付けなければ…と思っています。
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germanmed at 2022-03-04 04:51
> penguinophileさん、こんにちは。
ベルリンの壁を越えようとして撃たれて障害が残った患者さんがいました。彼のつらさは、そんなベルリンの壁があっさり消滅し、今の若者は壁の意味すらよく知らない、何のために命を懸けて戦ったのか判らなくなってしまった事でした。
色んな人の、色んな立場や視点を知るというのは、本当に大事ですね。
ベルリンの壁を越えようとして撃たれて障害が残った患者さんがいました。彼のつらさは、そんなベルリンの壁があっさり消滅し、今の若者は壁の意味すらよく知らない、何のために命を懸けて戦ったのか判らなくなってしまった事でした。
色んな人の、色んな立場や視点を知るというのは、本当に大事ですね。
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penguinophile at 2022-03-08 02:02
うーん、それは確かにつらいんでしょうね。でもむしろ今の若者が壁の意味をよく知らずに能天気でいられるという事実こそが、その患者さん達が命がけで戦った成果という気もします。少なくとも私は子供達には、知識として知ってはいても感覚的にピンと来ないほど、平和な環境で育って欲しいです。「鉄のカーテン」なんて歴史の授業で習う死語のままでいいです。
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germanmed at 2022-03-08 21:17
> penguinophileさん、こんにちは。
本当にそうですね。平和ボケできるって、とても恵まれていて幸せな事だと思います。
本当にそうですね。平和ボケできるって、とても恵まれていて幸せな事だと思います。