音楽は、音を楽しむ

YouTubeで、カフェで演奏中のピアニストが、

喉が渇いて飲み物を注文しようとする姿を見て、思い出した。

或る有名ドラマーの小さなライブに行った事がある。

近年のYouTubeで見られる好々爺っぽい感じでは全くなく、

彼がまだまだ鬼のように怖かった頃の話し。

会場は、小さなバー。

彼モデルのドラムスティックを愛用し、

「リズム＆ドラム・マガジン」など読んでいた私は、

彼が公言していた好みに合わせ、水商売風のケバさでキメて行った。

観客に気合いが入っていると、演奏者は盛り上がるから、

ファンとしては、やっぱり頑張るのだ。

仕事が終わってすぐ飛んで行ったけれど、既に満席で、

ハイヒールで立ち見かー・・・と覚悟を決めて壁際に場所を決めた。

するとすぐ、腰の低い青年がさっと寄ってきて、

「あの席、もう空きますからどうぞ」と指す先を見たら、

カウンターの舞台正面の一番いい席に彼が座っていて、

びっくり仰天の私に「どうぞ」と譲ってくれた。

あ、あの青年はローディーさんか、

彼はいつもそうやって特等席を取っておくのか、などと感心しつつ、

彼がオンザロック以外の飲み物を許さないというのも知っていたので、

好きでもないのに注文して、カウンターでちびちび舐めながら、

コンサートを楽しませてもらった。

ところが中盤、彼がしきりに、私の方を見て、飲むジェスチャーをする。

私にもっと飲めと言っているのか？いや、こんな強いの、それ無理！

頑張って飲んでみせるけれど、なんか違う。キョロキョロ。

派手ななりはしたものの中身はバンド小僧だった私は、彼が怖く、

答えを間違えたらドヤされそうな気がして、固まってしまっていたら、

しまいにローディーさんがやっと気付いて、泡食って飲み物を持って行った。

それを見て、「ああ、もしかしたら、私に飲み物を持って来て欲しかったのかな」

と、やっと気付いた、所詮は小娘。

コンサートの後は、バンドを囲んでの飲み会で、

席を譲って貰った以上、当然残るべきなのだろうと思ったし、

サインは凄く欲しかったのだけれど、

これ以上居ると、更にボロが出そうだったので、

忍びのごとく、人ごみに紛れてささーっと帰ってしまった。

ローディーさん、後で叱られただろうなー。ごめん。

こんな時代。わはは。

ライブハウスの控室で暗くて判らないけれど、勿論茶髪です。

音楽の根源は、音を楽しむだ！と今頃やっと気付いた。

昔は色々真剣過ぎて、こういう突き抜けた楽しさは知らなかったなあ。

（どうせYouTubeに上げてくれるのだし、

皆もスマホを下ろして生を楽しめばいいのに！）