石の上にも二十年

ドイツに来て２０年を迎えました。

新入生合宿で「いい医者が居ないよね」という話しになったら、

「だから私達がこれから、いい医者になるんじゃない！」

と一人が言って、皆がわーっと歓声をあげた、

ピッカピカの医学部１年生からも、２０年。

始まってみたら、皆が死に者狂いで髪を振り乱していて、

誰も助けてなんかくれないし、

役に立たなければ相手にすらして貰えない。

外国人のたどたどしいドイツ語になんて、耳を傾けて貰う暇もない。

試験の時、片隅で泣いている子がいるのが普通だったり、

精神を病んでやめてしまう子がいたり。

教養部修了の試験後には、同級生が半分位に減っていた。

ドイツに来て流した涙の量は、バケツ単位だと感じる程。

それでも踏ん張って、少しずつ居場所を作っていった。

ドイツの医学部生というのは他学部に較べると、

皆閉じこもって勉強していて、ノリも付き合いも悪い。

誕生日パーティーなんかでも、結局勉強の話しになってしまうのが嫌で、

誕生日に小さなクラブを借り切って、

勉強の話しが出来ない爆音でのディスコパーティーをした事もある。

私の時には、うちの医学部にはまだ卒業式もなくて、

国家試験に合格した順にパラパラと消えて行くかたちだったし、

スマホのない時代だったから、繋がりも細々。

それで今年は、またも私が一肌脱いで、

初めての同窓会を企画していたのだけれど、コロナで潰れてしまった。

二人の宝物に恵まれ、開業もしたのだけれど、

心は未だ暗雲に覆われている。

まあ、少し前に嵐の中で闘っていた事を思えば、

暗雲程度なら上等なのかも知れないけれど、

何だかちょっと疲れてしまった、２０周年。

１０年前はこうだった。１０年後はどうなっているだろう。

今はこんな気分かな。深読みして更にはまる。