2019年 10月 11日
受験生時代の思い出 |
私は情けない受験生だった。
そもそも高校は推薦入学で入ったので、受験の経験はなかった。
カナダ在住の叔父が帰国した時、
「くまちゃん、今年、大学受験やろ?こんなにのんびりしとっていいの?」
と母にこっそり訊いていた位。
四人姉妹の末っ子で、
末っ子というのは、矢張り圧倒的弱者なため、
周りの顔色を読んだり、状況を観察して行動するようになり、
社交上手になる反面、余り爆発できなくなる気がする。
しかも、同じ分野では二番煎じになってしまうため、
狭まれた選択肢の中で必死にもがく事となる。
1番上の姉は、デザインの専門学校に行ったので、
彼女の受験勉強は、絵の具を塗りたくっている姿。
入学時から卒業時までに一番伸びた生徒だったらしい。
(余談になるけれど、あっと言う間に卒業して就職して、
お給料で私達にお土産を買ってきてくれたり、外食を御馳走してくれたり、
一番お姉さんらしい姉だったのは、流石長女なのかも。
一度だけ、残業しているところに行って、その飛ぶような仕事ぶりに舌を巻いた。)
2番目の姉は新設高校の1期生で、英語科のトップだった。
3番目の姉は2期生で、理系のくせに共通一次の国語で満点をとったような強者。
この姉達は受験の時、半狂乱になる位頑張った。
1期生の姉は、先生方の期待を一身に負い、
寝込んでは、勉強できない不本意さにわんわん泣いていた程だった。
高校の合格実績を上げるため、かなりの有名大学まで「滑り止め」として複数受けて、全て合格した。
2期生の姉も、受験の時は鬼のように勉強し、荒れまくった。
私が最後に取っ組み合いの喧嘩をしたのは、受験の鬼が相手だった。
母は、姉達が出て行く度に、泣いた。
一番上の姉が家を出た時には、放心して骨折までした。
そして受験で荒れる姉達に当たられ、
受験が済んで一人、また一人と家を出て、
暗闇の中で洗濯物を前に座り、畳むのも忘れ、
身じろぎもせずに涙を流す影が目に焼き付いている。
私の受験時には、父も単身赴任中で、私は母と二人暮らしだった。
母は元々ピアノが専門だったのだけれど、その数年前にエレクトーンを始め、
エレクトーン講師になる試験だとか、パーティーでの演奏の準備とかで、
放っておけば飲食も忘れて弾き続け、後でふらふらになって倒れ、
私がお粥を作って食べさせると喜ぶような、浮世離れしたところがあった。
私は5期生で、高校では「期待外れの妹」だった。
私自身が、受験での勝負から逃げていた部分もある。
全力を尽くして、それでも姉達に敵わない事実を突きつけられるのが怖かった。
姉達のように狂って鬼になり、母を苦しめる覚悟もなかった。
母の涙を見てきた末っ子は、受験の戦いから逃げ、だから、私の受験は失敗だった。
両親は「浪人してもいいよ」と言ってくれて、それに本当に救われたけれど、
「浪人するにしても受験は経験しておいた方がいい」
と言われて受験だけして、受かった大学に、結局行く事にした。
そんなヘタレの私を宥めすかせ、受験に向かわせてくれた先生がいた。
担任でもないのに、本当にお世話になった。
航空大学校に逃げようとしていた私は、その先生に説得され覚悟を決め、
取り寄せた航空大学校の資料を泣きながら切り刻んだ。
先生に褒められたい一心で、先生の教科だけは頑張った。
それでもどうしても満点が取れず、どうしても1問、間違えてしまう。
ぺろんと満点を取ってしまう姉達に敵わない、
コンプレックスの塊となって打ちのめされ続けたのだけれど、
卒業後何年かして、あれは私が満点を取って満足してしまう事を懸念して、
わざと誰にも答えられない問題を1問混ぜていたのだと、聞かされた。
確かに姉達と違い、満点を取れば完結してしまうであろう、甘い私だった。
のらりくらりと、他の教科の勉強はそこそこにして、
山岳部を引退した後は、ドラム教室に通わせてもらったり、お菓子を作ったり手芸をしたり、現実逃避しまくり。
それでも苦しくて、もの凄く痩せてしまったり。
満点が取れずに悶々としているのに、
そんな私の気持ちを知らない担任の先生の褒め言葉にざらりと神経を逆撫でされ、
クラスの面前で「こんな点、欲しければ、くれてやります!」と吐き捨てたりして、
何ともまあ酷い生徒だったと、穴があれば入りたい気持ち。
(保護者面談で、「生徒たちの心が読めないんです」と、
担任の先生から悩み相談されていた母・・・)
私が本気で勉強するようになったのは、受験よりずっと後、
大学で学部に上がってからの事。
新しい世界で、「何をしても敵わない妹」という図から解放され、
入ってしまえば自分次第で幾らでも本気になれるんだ、と知った。
そしてドイツに医学留学して、寝ても覚めても勉強し、
人間やる気になればここまで出来るのか、と我れながら驚いた。
因みに、冒頭のカナダの叔父は、アメリカの超難関大学院で、
グラフを書き足さないといけない位特出した成績だったと、祖母が話していた。
この叔父の存在は、私達が海外に憧れを抱く一番の根っことなった。
私は日本でもドイツでも、決してトップにはなれなかったけれど、
死にもの狂いで、逃げずに踏ん張り続けて、
やっと皆に恥ずかしくないところまで来られたかな、と思う。
天才的なものに恵まれない私は、踏ん張って努力するしかない。
努力さえすれば、私程度の事は誰にでもできるのだ。
(ちょっと濃霧に包ませました。)
by germanmed
| 2019-10-11 01:44
| 受験生の君に
|
Comments(10)
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papricagigi at 2019-10-11 05:10
くまさん、こんにちわ!
くまさんは只者ではないって確信していたのですが、姉君さまたちも軍を抜いての優等生だったのですね。叔父さまも、お母さまの熱中ぶりも。。。只者ではなさすぎる! そういう血が流れれいるんだなぁと、うっとりしてしまいました。
もともと頭が良いというのに加えて、多種分野でとてつもない努力をされるその「忍耐力」もくまさん家の「Blood」ですね!はぁ~♡(←憧れのため息です)
くまさんは只者ではないって確信していたのですが、姉君さまたちも軍を抜いての優等生だったのですね。叔父さまも、お母さまの熱中ぶりも。。。只者ではなさすぎる! そういう血が流れれいるんだなぁと、うっとりしてしまいました。
もともと頭が良いというのに加えて、多種分野でとてつもない努力をされるその「忍耐力」もくまさん家の「Blood」ですね!はぁ~♡(←憧れのため息です)
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fusk-en25 at 2019-10-11 08:52
こんな強い姉たちのレベルだからこそ。。
もしもクマさんが一人っ子なら。。おそらくスラスラと優等生に決まってる。
その上にの努力やから。。本当の強さになるなあ。
とってもいいお話でした。
私は一人っ子で。
しかも家庭内事情で。クソやけになっていた思春期(受験期)
自分のズルを棚上げして。グレへんかっただけマシかな?
みたいなことでしたが。。
なんでグレなかったかと言うと。
あの環境ならグレても普通と周囲から思われるのが悔しかった。と言う変な性格が未だに尾を引いて。。
断崖絶壁好きやねん。。などと言い聞かせてはおります。
もしもクマさんが一人っ子なら。。おそらくスラスラと優等生に決まってる。
その上にの努力やから。。本当の強さになるなあ。
とってもいいお話でした。
私は一人っ子で。
しかも家庭内事情で。クソやけになっていた思春期(受験期)
自分のズルを棚上げして。グレへんかっただけマシかな?
みたいなことでしたが。。
なんでグレなかったかと言うと。
あの環境ならグレても普通と周囲から思われるのが悔しかった。と言う変な性格が未だに尾を引いて。。
断崖絶壁好きやねん。。などと言い聞かせてはおります。
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m
at 2019-10-11 09:55
x
くまさんは、4姉妹の末っ子だったのですね。
お姉さまたち、すごい優等生揃いですね。
私も一番上のお姉さまと同じ、デザインの専門学校に行ったので、受験勉強はデッサンや作文を描いてました。
社会に出て見て思ったのが、学生の時に優等生だった方でも
社会に出てからも優秀とは限らない事です。
やっぱり、努力に勝るものはないと言うか。
私も受験勉強らしきものはした覚えがないです。
デザインの仕事一筋にやって来たけど、才能に恵まれたわけでもないし、名の馳せたデザイナーやイラストレーターでもないですしね。
くまさんは、学生の自分、将来やりたい事が、ハッキリと見えてなかったのかもね。
いずれにしても今は、お医者さん一筋でやっているのですから、
素晴しい事です!
お姉さまたち、すごい優等生揃いですね。
私も一番上のお姉さまと同じ、デザインの専門学校に行ったので、受験勉強はデッサンや作文を描いてました。
社会に出て見て思ったのが、学生の時に優等生だった方でも
社会に出てからも優秀とは限らない事です。
やっぱり、努力に勝るものはないと言うか。
私も受験勉強らしきものはした覚えがないです。
デザインの仕事一筋にやって来たけど、才能に恵まれたわけでもないし、名の馳せたデザイナーやイラストレーターでもないですしね。
くまさんは、学生の自分、将来やりたい事が、ハッキリと見えてなかったのかもね。
いずれにしても今は、お医者さん一筋でやっているのですから、
素晴しい事です!
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toshi-pooh123 at 2019-10-11 22:43
すごいお姉様方だったんですね。
それにくまさんは頑張り屋さんだからすごいよねぇ。今があるのもその頑張りがあったからですよね!
お姉様方のことは話を聞いたことがあったような気もしますが、その方達からすればお母さまの私を見る目が厳しかったのも当然ですね😫
また、4人兄姉と同じような境遇なのに、同じく末っ子でも甘えたちゃんで考えの甘いスイートな私とはえらい違いで恥ずかしいσ(^_^;)
母から同じ親から生まれたんだから兄と一緒の大学に行けるはずと言われた時はさすがに「はぁ?」と思いましたが、それも冗談で話せるぐらい気にせず、兄は兄、私は私と going my way!
兄は色々兄弟のことを気にして大変だなぁと。
お気楽ご気楽にさせて頂いております。
持って生まれた才能はないけど、ありがたい性格ですな٩( ᐛ )و
まあ、生きてることに感謝してれば、生きていけます笑
頑張りすぎないでと言っても、頑張ってしまうくまさんだと思いますが、たまには私のことを思い出して、あいつでも生きていけるから、ぼちぼち行っても大丈夫と頑張り過ぎないようにして下さい。
それにくまさんは頑張り屋さんだからすごいよねぇ。今があるのもその頑張りがあったからですよね!
お姉様方のことは話を聞いたことがあったような気もしますが、その方達からすればお母さまの私を見る目が厳しかったのも当然ですね😫
また、4人兄姉と同じような境遇なのに、同じく末っ子でも甘えたちゃんで考えの甘いスイートな私とはえらい違いで恥ずかしいσ(^_^;)
母から同じ親から生まれたんだから兄と一緒の大学に行けるはずと言われた時はさすがに「はぁ?」と思いましたが、それも冗談で話せるぐらい気にせず、兄は兄、私は私と going my way!
兄は色々兄弟のことを気にして大変だなぁと。
お気楽ご気楽にさせて頂いております。
持って生まれた才能はないけど、ありがたい性格ですな٩( ᐛ )و
まあ、生きてることに感謝してれば、生きていけます笑
頑張りすぎないでと言っても、頑張ってしまうくまさんだと思いますが、たまには私のことを思い出して、あいつでも生きていけるから、ぼちぼち行っても大丈夫と頑張り過ぎないようにして下さい。
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ひかり
at 2019-10-12 17:31
x
くまさん、苦しい思いをしていたのですね…
ハイレベルな中でもそれはそれで色々ありますね
努力の仕方が違うのは、壮絶なお姉さま方の頑張りを
見ているからなんでしょうね…
でもだからこそ、
人の痛みや苦しみを汲み取ってあげられる
すてきなドクターになっているんだろうな と思います
どんな経験もきっとその後の人生で役に立つ!
と教えられます ガンバロウっと。
ハイレベルな中でもそれはそれで色々ありますね
努力の仕方が違うのは、壮絶なお姉さま方の頑張りを
見ているからなんでしょうね…
でもだからこそ、
人の痛みや苦しみを汲み取ってあげられる
すてきなドクターになっているんだろうな と思います
どんな経験もきっとその後の人生で役に立つ!
と教えられます ガンバロウっと。
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germanmed at 2019-10-12 19:05
> papricaさん、こんにちは。
うちの母の実家はとてもユニークでした。理系と芸術系のミックスで、しかも祖母は女学校時代にスカート(女性はズボンを履かない時代だったから)でスキーをしちゃうようなお転婆さんだったので、話しが面白くて、いっぱい影響を受けたかなと思います。
うちの母の実家はとてもユニークでした。理系と芸術系のミックスで、しかも祖母は女学校時代にスカート(女性はズボンを履かない時代だったから)でスキーをしちゃうようなお転婆さんだったので、話しが面白くて、いっぱい影響を受けたかなと思います。
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germanmed at 2019-10-12 19:08
> fuskさん、こんにちは。
一人っ子だったら、全然違う性格になっていたかも知れません。
上が優秀でしかもユニークだと、自分のオリジナリティを探すのも大変で。
グレたfuskさん、見てみたかったかもー。きっと、かっこいい。
一人っ子だったら、全然違う性格になっていたかも知れません。
上が優秀でしかもユニークだと、自分のオリジナリティを探すのも大変で。
グレたfuskさん、見てみたかったかもー。きっと、かっこいい。
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germanmed at 2019-10-12 19:10
> mさん、こんにちは。
mさんもデザイン畑の方なのですね!
そうですね。ここに辿り着くまでに、随分と紆余曲折があったなあと、我ながら呆れる位です。
mさんもデザイン畑の方なのですね!
そうですね。ここに辿り着くまでに、随分と紆余曲折があったなあと、我ながら呆れる位です。
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germanmed at 2019-10-12 19:16
> toshi-poohさん、こんにちは。
お母さまの見る目・・・わはは。(お母さん、読んでる?)
toshi-poohさんも4人の末っ子だったんだ。3人かと思っていたー。
大学では初めて、姉達の後を歩くのとか、くま家に対する固定観念なんかから解放されて、凄く楽しく開花させてもらったよー♪
お母さまの見る目・・・わはは。(お母さん、読んでる?)
toshi-poohさんも4人の末っ子だったんだ。3人かと思っていたー。
大学では初めて、姉達の後を歩くのとか、くま家に対する固定観念なんかから解放されて、凄く楽しく開花させてもらったよー♪
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germanmed at 2019-10-12 19:19
> ひかりさん、こんにちは。
うん、苦しかったー。入学直後の私に面と向かって、「お前が妹か。大した事ないな、はは」と言い放った先生までいたもの。
でも、「私だってやればできるんだもん」という逃げ道を残したくて本気になれなかった私は、自業自得でもあったんだけど。
うん、苦しかったー。入学直後の私に面と向かって、「お前が妹か。大した事ないな、はは」と言い放った先生までいたもの。
でも、「私だってやればできるんだもん」という逃げ道を残したくて本気になれなかった私は、自業自得でもあったんだけど。