2018年 08月 16日
日本の医大の女子一律減点問題について |
この件に関して、私の意見を訊かれましたので、今更ですが書いてみます。
↑「関係者によると、同大医学部医学科の一般入試の合格者数は10年に女子が全体の4割弱に達したため、「女子は3割以内におさえるべきだ」として、翌年以降、男子優遇の措置が取られてきたという。」
「入試の得点は女子の方が高い傾向があり、点数順に合格させたら女子大になってしまう」
「女性は大学卒業後に医師になっても、妊娠や出産で離職する率が高い。女性が働くインフラが十分ではない状況で、仕方のない措置だった」
「入試の得点は女子の方が高い傾向があり、点数順に合格させたら女子大になってしまう」とした上で「女性は大学卒業後に医師になっても、妊娠や出産で離職する率が高い。女性が働くインフラが十分ではない状況で、仕方のない措置だった」
「入試の得点は女子の方が高い傾向があり、点数順に合格させたら女子大になってしまう」とした上で「女性は大学卒業後に医師になっても、妊娠や出産で離職する率が高い。女性が働くインフラが十分ではない状況で、仕方のない措置だった」
入試の得点は女子の方が高い傾向があり、点数順に合格させたら女子大になってしまう」とした上で「女性は大学卒業後に医師になっても、妊娠や出産で離職する率が高い。女性が働くインフラが十分ではない状況で、仕方のない措置だった
↑ 「東京医科大(東京都新宿区)が二〇一三年、女性医師や研究者の育児と仕事の両立を支える国の事業に選ばれ、三年間で計八千万円の補助金を受けていたことが分かった。」
「東京医科大には女性研究者の出産や子育てと、臨床や研究活動の両立支援のため、一三~一五年度に計八千二十六万四千円が交付された。」
まず、入試は公正でなければいけない。これ、大前提。
医学部の定員は文部科学省によって決められているものなのに、女子一律減点(/男子加点)というかたちで、こっそりと調整が行われていたのは、完全にアウト。しかも、入試に6万円もとるのだとか。
更に、こんな事をしつつ、国の女性支援の補助金まで受けていたとは、論外。
ドイツでは、医学部に入学しても、試験でどんどん振り落とされて、半数位がやめてしまうのだけれど、
日本の医師国家試験合格率は9割前後という事で、入試が「医師になれるかどうか」の大きな鍵を握ってしまう。
その入試で、陰でこっそりそういう事をするのは、どんな理由があろうとも許される事ではない。
そもそも大学入試の内容と、医師として必要な知識とは違うのだから、入試に重きが置かれる教育体制自体も非常に問題。
どうしても女子を多くできないと言うのなら、時代に逆行して、公に男子枠・女子枠を作るしかないでしょう。
それで差別だと叩かれて実現できないのなら、皆を納得させるに足る正当な理由ではなかったという事になる。
「仕方ない」と言い切れるのなら、激論を交わして国民を納得させてみせよ。
但し、この根底にある「女性=子どもを産むもの」という固定概念は、
結婚せず/子どもを産まず、バリバリ働いている女性に対しては、非常に失礼だし、
したくても結婚できない/子どもを産めない女性の心を抉るだろう。
トランスジェンダーはどうなるんだ、という問題もある。
* * *
そして、その後のアンケートで、
65%の医師が「(減点による制限を)理解できる」と答えるような、労働環境。
「めちゃくちゃ大変だから、男性医師がいなければ回らない」というのは、
労働環境の問題で、「だから仕方ないじゃん」と逆ギレしてる場合じゃない。
だって、どんなに頑張ったところで、1日24時間しかない訳で、そこが限界。
寝ずに頑張っても、本人はバリバリのつもりでも、
実はテストすると、本人がびっくりする位、凄く能率が落ちている。それが限界。
そして案外、自分では疲れや精神状態を隠して果敢にやっているつもりでも、患者さんにはバレバレだったりする。
限界まで頑張っても、限界以上にはなれない訳で、
結局どこかに線はあるのに、自分ではその線引きができない。
全員が限界を超えてフラフラになって頑張っている状態は、
凄い!偉い!では済まない、或る意味、無責任な状態だと思う。
人命救助だって、まず自分の命の安全を確保してからするのが基本。それはエゴではなく、自分が溺れていたら溺れる者の救助はできないという、当然の理。飛行機の緊急時でも、親は自分がまず酸素マスクを装着してから子どもに装着させるように、となっている。
医者自身が溺れかけているのが「当たり前」、男性の方が女性より体力があるから溺死まではいきにくい、だから頑張りのきく男性医師万歳!という現状を、このまま維持するのでいいのか。
「仕方ない」「当たり前」「必要悪」という人は、この現状は変わらないものとし、容認してしまう事にもつながる。
「そういうきつさをこなさないと、医師として成長しない」
というのは、体制としての言い訳であり、正当化であり、
「俺も苦労して上ってきたんだから、お前も苦しめ」という上下社会であり。
勿論、経験は黄金の価値だし、新人の時はどの国でも大変です。明けても暮れても仕事一色の生活。新人時代のそういう苦労は必要。
あと、手術など「数をこなしてなんぼ」の分野だと、のんびりしていられない。
心臓カテーテル検査をはじめ、レントゲンを使いながらの手技など、「被曝量が多いから、若い女性にはちょっと薦められない」と言われる分野はある。
そういうのはあるけれど、それはまた別。
今の日本の医療は、男性医師が中心。そりゃ、その通りでしょう。
おばあちゃん先生が少ないのは、昔は女医が少なかったのと、今の女医が続かないのとの、働きにくさの証明。
この件に関して「仕方ない」「当たり前」という発信をしている人の多くが女医である事からも、彼女たちがどれだけこの現状に痛めつけられているかを表している。
でも、今が大変なのはよく判るけれど、じゃあ未来もそのままなのか。
日本の医師には、「どんな激務をこなしてきたか」の自慢話しが大好きな人が結構いて、他に自慢する事はないのだろうかと思ってしまう。
医学教育には多かれ少なかれ税金が注ぎ込まれているのだから、
女医の多くが戦力にならず辞めてしまうのなら、医学部に女性を入れるのは税金の無駄という論がある。
いや、それは、女医が辞めざるを得ない労働環境の方が問題なのでしょう。↑ 「出血が続いていたのに休みが取れず、そのうちに胎児がおなかの中で亡くなった。しかし、人手が足りず、亡くなった胎児の処置をせずに出勤。泣きながら働いていた。」
医者に限らず、日本にはこんな働き方が存在し、
ここまで酷くない話しなら、ごろごろしている。
これで女性支援だとか、少子化問題対策だとか、ふざけなさんな。
* * *
世の中には、男性医師が多くなくても回していける医療体制もある。
ドイツでは2016年の数字を見ると、医師として働いている約46.5%が女性。
でも、そのせいで医療が破綻しているかと言うと、そんな事はない。
(ドイツはドイツで別の問題があるけれど、それはこの件とは無関係なので、ここでは触れない。)
私の同級生でも、驚く位、男女を問わずそれぞれ色々な科に散らばっていて、問題になる程の偏りはない。
確かに、若い女性の就職時に産休・育休のテーマはちょっと不利だし、
私を含め、出産した女性はキャリアアップが遅れている例が多いけれど、
仕事と家庭を両立できずに辞めた例は、まだ耳に入ってこない。
私は今「ゆるい」働き方をしているけれど、それは「女性だから」ではなく院長の方針で、彼自身も同様のゆるさで働いている。
「寝不足じゃない、クリアーな頭脳で働いてほしい」
「自分がギリギリだったら、まともな人助けなんて出来る訳がない」
「ゆっくり考えを巡らせたり、調べたり勉強したりできる時間が大事」
私はその方針に賛同したから、ここを選んだ。
でもドイツの家庭医にも、うちの医院の何倍もの患者数をこなす先生もいて、それは人それぞれ、各自の選択となっている。
女性は基本的に、男性に体力では敵わないけれど、
女性には女性の強みがあり、
また「男性だから」「女性だから」を超えた、個人性があり、
患者さんの求める医療のかたちも、人それぞれで、
だからそういう多様性が大切だと、私は思います。
by germanmed
| 2018-08-16 06:46
| 日本
|
Comments(12)
クマさんのお話を当然なこととして読みました。
実際には女性の方が真面目で優秀なので、
男性が脅威を感じているのでしょうかね。
草食系なんていわれてニタニタしてないで。
男も奮起して頑張ればいいじゃない。
男女の違いはあっても男女に差なんかないと思って私は生きてきましたけどね。
実際には女性の方が真面目で優秀なので、
男性が脅威を感じているのでしょうかね。
草食系なんていわれてニタニタしてないで。
男も奮起して頑張ればいいじゃない。
男女の違いはあっても男女に差なんかないと思って私は生きてきましたけどね。

本当に!
大学はなんの理屈を捏ねているんだ?!
と言いたくなります。
内向き内向きになって本来の筋がどこかに飛んでいる。
今のニュースはどれもこれも同じものが通底していて
何だかデジャヴの繰り返しのようです。
はー、何はともあれ自分がまずしっかりしなきゃ。
大学はなんの理屈を捏ねているんだ?!
と言いたくなります。
内向き内向きになって本来の筋がどこかに飛んでいる。
今のニュースはどれもこれも同じものが通底していて
何だかデジャヴの繰り返しのようです。
はー、何はともあれ自分がまずしっかりしなきゃ。

くまさんのおっしゃるとおりですよ! 医学部の入試の段階でこんな
ひどい不正が行われていたなんてね。たぶん他の大学でもこっそり
あるのではと思います。こういう不正をする人間には、「女は生む機械なのだから引っ込んでいろ!」というのがあって、離職率が高いとかハードな仕事環境じゃ無理とかは言い訳してるだけに思えます。
子供3人は産めという国会議員もいますが、産めば産んだで職場に支障があると叩かれるのですからねえ。それと日本には妙に我慢とか辛抱を礼賛する傾向があり、改善するより必死に耐え忍ばせてこそと思っている人が各分野に散りばめられているのも労働環境がよくならない原因のひとつだと思います。
ひどい不正が行われていたなんてね。たぶん他の大学でもこっそり
あるのではと思います。こういう不正をする人間には、「女は生む機械なのだから引っ込んでいろ!」というのがあって、離職率が高いとかハードな仕事環境じゃ無理とかは言い訳してるだけに思えます。
子供3人は産めという国会議員もいますが、産めば産んだで職場に支障があると叩かれるのですからねえ。それと日本には妙に我慢とか辛抱を礼賛する傾向があり、改善するより必死に耐え忍ばせてこそと思っている人が各分野に散りばめられているのも労働環境がよくならない原因のひとつだと思います。
> fuskさん、こんにちは。
うちの患者さんも、院長に診て欲しい方もいれば、私じゃなければ駄目という方もいて、それぞれ違ってそれでいいじゃない、と思います。
でも、入試どうこうよりも、日本の働き方の根本の問題だなあと思いました。
うちの患者さんも、院長に診て欲しい方もいれば、私じゃなければ駄目という方もいて、それぞれ違ってそれでいいじゃない、と思います。
でも、入試どうこうよりも、日本の働き方の根本の問題だなあと思いました。
> ひかりさん、こんにちは。
母が娘たちを外国に出したがっていた理由が、自分も親になってから一層実感できるようになってきました。今の日本の子ども達が大人になる頃に、一体どうなっているんだろう、と思うと、私達大人の責任ですよね。
母が娘たちを外国に出したがっていた理由が、自分も親になってから一層実感できるようになってきました。今の日本の子ども達が大人になる頃に、一体どうなっているんだろう、と思うと、私達大人の責任ですよね。
> ピーチさん、こんにちは。
昔はそれが公然の秘密で、あちこちの大学でやっていたみたいですね。
「女性だから楽させろ」という訳ではなく、男女を問わず或る程度まともな労働環境が整えられるべきですし、妊娠・出産だけは命がかかっているので社会全体でカバーしなくては、と思います。
昔はそれが公然の秘密で、あちこちの大学でやっていたみたいですね。
「女性だから楽させろ」という訳ではなく、男女を問わず或る程度まともな労働環境が整えられるべきですし、妊娠・出産だけは命がかかっているので社会全体でカバーしなくては、と思います。

日本で女医さんが少ないのは、こんなことされていたのも
原因の一つなのだなぁと思いましたね。
くまさんが言うように公に男子枠、女子枠と分けて
試験を実施すればいいんですよね。
男性だから女性だからと区別するのは、どうかなぁと思いますね。
患者からしてみれば、医師は医師で男女関係なく、先生ですからね。
原因の一つなのだなぁと思いましたね。
くまさんが言うように公に男子枠、女子枠と分けて
試験を実施すればいいんですよね。
男性だから女性だからと区別するのは、どうかなぁと思いますね。
患者からしてみれば、医師は医師で男女関係なく、先生ですからね。

お忙しい中、こうしてご意見を聞かせていただけたこと、大変うれしく思います。ありがとうございました。
人間が人間らしく生きること、人の命を左右する状況にいる可能性が高い医師であるからこそ、最適な判断ができる環境を整えることが大事なんだとわかりました。
「人命救助だって、まず自分の命の安全を確保してからするのが基本」
確かにそうです。
入院した際に、部屋に様子をうかがいに来てくれる若い女医さんが疲れた顔していた時、思わず反対に、「先生大丈夫ですか?」と聞いて、苦笑されたことがあります。
30時間超も働きっぱなしと聞いて、本当に心配になったんです。
医者は本当に過酷な重労働だと思いました。常に時差ボケなんじゃないでしょうか。それなのに最高の判断や治療をするのがあたりまえなんですよね。
だからこそ女子は少なめに、というのは何の解決にもなっていないはずなのに、その状況がしょうがないと女医さん自身が思ってしまう現状ということに愕然としました。
亡くなった子をおなかに残して、泣きながら夜勤をせざるを得ないなんて…。信じられません。命を救う立場の方からしたら想像を絶する心の傷になったでしょうね…。ここまで酷い場合もあるなんて知りませんでした。
さだまさしの「風に立つライオン」の歌詞を思い出しました。
私は医療関係者でも何でもないので、偉そうなことは何も言えませんが、明るみになったこの機会に、改善されることを祈っています。
この度はくまさんの貴重なお時間を割いて、記事を書いてくださり、本当にありがとうございました。
人間が人間らしく生きること、人の命を左右する状況にいる可能性が高い医師であるからこそ、最適な判断ができる環境を整えることが大事なんだとわかりました。
「人命救助だって、まず自分の命の安全を確保してからするのが基本」
確かにそうです。
入院した際に、部屋に様子をうかがいに来てくれる若い女医さんが疲れた顔していた時、思わず反対に、「先生大丈夫ですか?」と聞いて、苦笑されたことがあります。
30時間超も働きっぱなしと聞いて、本当に心配になったんです。
医者は本当に過酷な重労働だと思いました。常に時差ボケなんじゃないでしょうか。それなのに最高の判断や治療をするのがあたりまえなんですよね。
だからこそ女子は少なめに、というのは何の解決にもなっていないはずなのに、その状況がしょうがないと女医さん自身が思ってしまう現状ということに愕然としました。
亡くなった子をおなかに残して、泣きながら夜勤をせざるを得ないなんて…。信じられません。命を救う立場の方からしたら想像を絶する心の傷になったでしょうね…。ここまで酷い場合もあるなんて知りませんでした。
さだまさしの「風に立つライオン」の歌詞を思い出しました。
私は医療関係者でも何でもないので、偉そうなことは何も言えませんが、明るみになったこの機会に、改善されることを祈っています。
この度はくまさんの貴重なお時間を割いて、記事を書いてくださり、本当にありがとうございました。
> mさん、こんにちは。
男子枠・女子枠にして解決するのは、入試の公正性の問題だけで、他の問題はそれでは解決しません。
イスラム教徒の女性は女医でなければ嫌だという人が多いですし、逆にマッチョな文化の男性は男性医師の言う事しか信用しませんので、男女どちらも必要だと思います。
男子枠・女子枠にして解決するのは、入試の公正性の問題だけで、他の問題はそれでは解決しません。
イスラム教徒の女性は女医でなければ嫌だという人が多いですし、逆にマッチョな文化の男性は男性医師の言う事しか信用しませんので、男女どちらも必要だと思います。
> メガネざるさん、こんにちは。
本当にその通りですね。この機会に改善して欲しいです。
私自身34時間勤務とかした時期もありますし、当直後に疲れて床がぐらぐら揺れている感じになったりしましたが、やっぱりそれでは私のベストの医療はできない。前日ちゃんと早寝して出勤すると、頭の回転の速さがやっぱり全然違います。
難しいお題を頂きましたが、私も自分の考えをまとめるよい機会になりました。有難うございました。
本当にその通りですね。この機会に改善して欲しいです。
私自身34時間勤務とかした時期もありますし、当直後に疲れて床がぐらぐら揺れている感じになったりしましたが、やっぱりそれでは私のベストの医療はできない。前日ちゃんと早寝して出勤すると、頭の回転の速さがやっぱり全然違います。
難しいお題を頂きましたが、私も自分の考えをまとめるよい機会になりました。有難うございました。
くま様
こんばんは。
最後の「女性は基本的に、男性に体力では敵わないけれど、
女性には女性の強みがあり、また「男性だから」「女性だから」を超えた、個人性があり・・・」の部分、素晴らしいですね^^足りないところを補い合って尊重しあって、男女が成長することが大切ですからね。特に医療現場には女性の力は絶対不可欠だと思います。
こんばんは。
最後の「女性は基本的に、男性に体力では敵わないけれど、
女性には女性の強みがあり、また「男性だから」「女性だから」を超えた、個人性があり・・・」の部分、素晴らしいですね^^足りないところを補い合って尊重しあって、男女が成長することが大切ですからね。特に医療現場には女性の力は絶対不可欠だと思います。
> yurikaさん、こんにちは。
有難うございます!
私自身は、ふらふらな医者に命を預けるのは凄く嫌だなと思います。
皆それぞれ長所短所があって、患者さんの好みや要求も色々ですから、多様性を消してしまわない事が大事ですよね。
有難うございます!
私自身は、ふらふらな医者に命を預けるのは凄く嫌だなと思います。
皆それぞれ長所短所があって、患者さんの好みや要求も色々ですから、多様性を消してしまわない事が大事ですよね。