仕事は丁寧に |

少し前、ごく普通の下痢で来院した患者さんの腹部を聴診したら、
血管性雑音が聞こえました。
聞きたかったのは腸の音だったんだけど・・・偶然。
病院へ送ったら、どんぴしゃ。重度の血管狭窄が見つかりました。
病院でまず「一体どうやって見つけられたの?」と訊かれ、
患者さんが「下痢でお医者さんに行ったら、聴診器で」と言ったら驚かれ、
更に診察してみて「エコーでは見えるけれど、殆ど聞こえないよ!」とまた驚かれたそう。
私の聴診器なんて、そんなに高級品ではないのだけれど。
病院からわざわざ「狭窄、ありましたよー」と電話まで掛かってきて、嬉しかった。
家庭医の難しさというのは・・・
例えば下痢がはやれば下痢の患者さん、風邪の季節には風邪の患者さん、と1日に何人も同じような症状の人が続き、そのうちの殆どは薬なしでも治るようなもの。
だから、きちんと診察せずに処方箋や病欠だけ出して済ます医者も結構います。
でもその中に、ごく稀に深刻な病気が紛れ込んでいる事があるのです。
今回の患者さんみたいに、働き盛りの若さで、普段は元気だから殆ど医者にかかる事はなくて、風邪だの下痢だのの時にたまたま診察して、何か他のものを発見する事もある。
いつも「あそこが悪い、ここが悪い」と愚痴をこぼす人も、「またか」と聞き流していたら、オオカミ少年みたいに今回ばかりは本当に深刻な病気だったりする事もあり得る。
私の指と指の間をするりと通り抜けていこうとする病気を捕まえなければならない責任を、
いつもずっしり感じます。
昔、呼吸器科医のところで実習していた時の「レントゲンというものは、一度撮って大丈夫だったら次は何年後だからね。絶対に見逃しをしちゃいけないよ。きちんと読図する自信がない人は、レントゲンなんか撮っちゃいけない。」という先生の言葉を、よく思い出します。これはレントゲンだけでなく、医療全てに通ずるものだなあ、と。
名医じゃない私に出来る事は、一人一人しっかり話しを聞き、丁寧に診る事だけ。
ハイテク医療機器もなく、殆どが自分の五感を使うだけ。
その時間を与えられている有難さを、いつもしみじみ噛み締めています。
院長先生は相変わらず♪
最近の余暇は詩の暗唱をしているとかで、私の大好きなシラーの詩を諳んじてくれたのですが、凄ーくいいところで「今日ここまで覚えたところ」と打ち切られ、のたうちまわりそうになりました。

ワルシャワのホテルの窓からの眺め。
この交差点の動き、見ていて飽きなかった!
ハードスケジュールでしたが、凄く充実していて楽しい総会でした。
■欧州日本人医師会の電話健康相談(無料)■
(月・水・木)21時~22時/(火)22時~23時 (ドイツ時間)
+49 9951-9493-399
↓詳細はこちら。
http://www.eu-jp-doctors.org/page2/

私もくまさんの様な、お医者さんにかかりたいです!
ほんと、丁寧に見てもらえるのは、患者としてもありがたいです。
ホテルからの眺め、この交差点、見てるだけでも楽しそう!

日本とは違う医療システムに、まだ慣れないことがあります。
病院に電話しても、予約を入れてもらえないこともあります。
スウェーデンでは、患者さんを診察する時間よりも、そのあとのぺーパーワークの方にかかる時間の方が長い!とお医者さんたちが抗議したこともあります。大変なお仕事だと思います。でも、とっても立派なお考えで、とっても尊敬します。

どんな運動でも実践無くしては衰退する。。と。私は思います。
情報だけが膨らんで人間がついていけなくなるから。。

この交差点、ラッシュアワーになると車がぎっしり詰まって、それが順々に動いていって、見ていて本当に面白かったです。自分で運転するのは絶対無理!と思いましたが。
当時の私が卒論にシラーを選んだのは、この院長先生に出会うための伏線だったの?!という感じです。あはは。
Sさんも、無理せず、自分らしく、ガンバレー。
ドイツでも医者の事務仕事は多くて、問題になっています。
あの、私は全然そんな立派な訳ではなくて、全ては院長先生の考えと手腕のお陰なんです。5分診察でやっと経営が成り立つ、という医院も多い中、うちの院長先生は無駄を徹底的に省き、「医者は医療にさえ集中したらいい」「だからそこに存分に時間を使える」という環境を作り上げる事に成功しているんです。この院長先生に出会えた事に、本当に感謝です。
応援ありがとうございます!私は単純なので、褒められたり応援されたりすると、頑張る力がどんどん湧いてくるんです。院長先生は褒め言葉を惜しまない人なので、とってもいい相性です。ふふ。
人間がついていけない現代社会になってきていますね。
今年のワルシャワ総会で皆に「顔が明るくなったね」と言われ、「あ、それは新しい職場で楽しいからです!」と即答しました。
家庭医の難しさ、だから気を付けなければいけない事、院長先生から毎日学んでいます。どんなに頑張っても見つけられない病というものもありますが、見つけられた筈なのにきちんと診察しなかったから見つけられなかったというのだけは、あってはいけない事ですよね。

逆に私は持病で通院しすぎて、先生も胸の音さえ聴かず、はいはい、いつもの薬でいいよね?って数分でおしまいです。
基本の診察って大事だと思います。
そうですね。持病での通院でも、毎回は無理だとしても定期的に診察して欲しいですよね。私はちゃんと診察しないと不安になる方なので、好きなだけ診察させてくれる院長先生に出会って本当によかったです。
私は家庭医での診察3分後に「それで、病気の証明書か薬(我が家は一部負担なので処方箋ですが)か、どちらがほしいの?」と聞かれたことがあります。その時は胃腸炎で動けるようになってから行ったし、私のドイツ語がカタコトなこともあるけど、くまさんの記事を読んで、そろそろ他のお医者さんにかかるべきかな、、、と思いました。

ちなみにそのお医者さんには病名を言わない、という不満もあります。腱鞘炎の時も診察(素人目には、折れてるかどうかの確認だけのように見えました)して処方箋出して終わり、説明なし、って感じでした。
個人的な相談になってしまってすみません。ちなみにいつも、くまさんの、肝心なことにびしっと回答する様に感動しています。きっとくまさんの診察もそういう感じなんだろうな、と想像したりしています。家庭と仕事の両立は大変と思いますが、こっそり(ひっそり?)応援しています。
そうですね、家庭医って本当にピンキリで・・・だから就職先を決める時には、かなーり粘って選びました。いい加減な医療をしているボスからは学びたくなかったですし、雑事が多くて医療にかける時間が削られるのももううんざりだったので。
「こういう事情で早く回復したいので、様子見よりも積極的な薬治療をして欲しい」とか、自分の希望を言っても構わないと思いますよ。まあ、薬は副作用があるので、私も薬なしで治りそうな時には極力出しませんけれどね。
いつでもどうぞー。ただ、「患者が家族友人だと主観が入り過ぎて判断力が鈍る」という意見もあり、ご期待に応えられるかどうか判りませんが。
それよりまた遊んで下さいね♪
家庭医がふるいにかけなければ、他の各科専門医はパンクしてしまうと思います(ドイツでは家庭医も専門医です)。でも、だからこそ責任重大なのですが。
この後、更に二人血管狭窄の疑いで送り込んだので、そちらはどうかなーと、これまた気になっています。見つけるのは大事ですが、患者さんにとっては何もなかった方がずっといい訳ですから、私の思い違いだったらその方がいいなと思います。