2015年 07月 16日
あと60日 |
二人の男が話していた。
自由志願かい?
ったりまえさ。
何歳?
18。きみは?
ぼくも。
二人の男は別れた。
彼らは兵士だった。
一人が倒れた。死んだ。
戦争だった。
戦争が終わった時、兵士が家に帰って来た。でも食べる物がなかった。その時一人の男がパンを持っているのが目に入った。殴り殺した。
人を殴り殺したりしちゃいけないじゃないか、と裁判官が言った。
何故いけない?と兵士は訊いた。
和平会議が終わった時、大臣達は街に出た。そこで射的場へ通り掛かった。「おひとつ如何?」と赤い唇の少女が呼びかけた。大臣達は皆銃を手に取り、小さな紙の人形を撃った。
大臣達が撃ちまくっている時に一人の老婆が来て、皆の銃を奪った。一人が銃を取り戻そうとしたら、老婆は彼にびんたを食らわせた。
或る母親だった。
二人の人間がいた。2歳の時、彼らは手で叩き合った。
12歳の時、棒で殴り合い、石を投げるようになった。
22歳の時、銃で撃ち合った。
42歳で爆弾を投げた。
62歳で細菌を使った。
82歳の時、彼らは死んだ。そして隣同士に葬られた。
百年後、一匹のミミズが彼らの墓を掘り進んだ時、それがかつて二人の人物だった事には全く気付かなかった。それは同じ土だった。全て同じ土だった。
(Wolfgang Borchert 「Lesebuchgeschichten」より)

戦闘機の残骸の下で

一心不乱に花を摘む
自由志願かい?
ったりまえさ。
何歳?
18。きみは?
ぼくも。
二人の男は別れた。
彼らは兵士だった。
一人が倒れた。死んだ。
戦争だった。
戦争が終わった時、兵士が家に帰って来た。でも食べる物がなかった。その時一人の男がパンを持っているのが目に入った。殴り殺した。
人を殴り殺したりしちゃいけないじゃないか、と裁判官が言った。
何故いけない?と兵士は訊いた。
和平会議が終わった時、大臣達は街に出た。そこで射的場へ通り掛かった。「おひとつ如何?」と赤い唇の少女が呼びかけた。大臣達は皆銃を手に取り、小さな紙の人形を撃った。
大臣達が撃ちまくっている時に一人の老婆が来て、皆の銃を奪った。一人が銃を取り戻そうとしたら、老婆は彼にびんたを食らわせた。
或る母親だった。
二人の人間がいた。2歳の時、彼らは手で叩き合った。
12歳の時、棒で殴り合い、石を投げるようになった。
22歳の時、銃で撃ち合った。
42歳で爆弾を投げた。
62歳で細菌を使った。
82歳の時、彼らは死んだ。そして隣同士に葬られた。
百年後、一匹のミミズが彼らの墓を掘り進んだ時、それがかつて二人の人物だった事には全く気付かなかった。それは同じ土だった。全て同じ土だった。
(Wolfgang Borchert 「Lesebuchgeschichten」より)

戦闘機の残骸の下で

一心不乱に花を摘む
by germanmed
| 2015-07-16 23:47
| 日本
|
Comments(6)

戦争とは関係なく、この妹こぐまちゃんの写真が、
可愛らしく、なごみますね!
戦闘機が立派ですね。
可愛らしく、なごみますね!
戦闘機が立派ですね。
一心不乱に花を摘む。
モーリス・ドリュオンの「緑のゆび」のような光景ですね。
モーリス・ドリュオンの「緑のゆび」のような光景ですね。
★mさん、こんにちは。
これは技術博物館で、沢山の乗り物が展示してあるのですが、どうしても戦争関連のものが多くて。戦争に向かってのベクトルというものはここまでの力があるんだなあ・・・と感じさせられました。
これは技術博物館で、沢山の乗り物が展示してあるのですが、どうしても戦争関連のものが多くて。戦争に向かってのベクトルというものはここまでの力があるんだなあ・・・と感じさせられました。
★fuskさん、こんにちは。
「緑のゆび」ああ、そんな本があったなあと、これまた読みたくなりました。
「緑のゆび」ああ、そんな本があったなあと、これまた読みたくなりました。
こんにちわ
草子さんち経由でやって来ました
いろいろ思うことはあるのに
この文章に内蔵されている深い真実と
戦闘機と この平和であどけない草摘む風景とのギャップに 言葉がうまくでてきません
しかし 戦闘機ってどうしてこうもおぞましい姿をしているのでしょうね
いつまでも世界中の子どもたちが 安心して草を摘める世界であり続けますように
そうでないところには その平安が一日も早く戻ってくること祈って止みません
草子さんち経由でやって来ました
いろいろ思うことはあるのに
この文章に内蔵されている深い真実と
戦闘機と この平和であどけない草摘む風景とのギャップに 言葉がうまくでてきません
しかし 戦闘機ってどうしてこうもおぞましい姿をしているのでしょうね
いつまでも世界中の子どもたちが 安心して草を摘める世界であり続けますように
そうでないところには その平安が一日も早く戻ってくること祈って止みません
★Junkoさん、こんにちは。
御存知かも知れませんが、このBorchertという作家は兵役にとられ、戦後に戻って来てから幾つかの作品を書き、1947年に26歳で亡くなりました。戦争の反吐が出る程の理不尽さや矛盾などを短い言葉でばしばしと表現していて、原文はもっともっと凄いです。これはほんの一部で、この前後に幾つか段落があります。
この博物館には戦闘機が沢山展示されていて、「人を殺すために開発された技術」のおぞましさに初めて直に触れました。
御存知かも知れませんが、このBorchertという作家は兵役にとられ、戦後に戻って来てから幾つかの作品を書き、1947年に26歳で亡くなりました。戦争の反吐が出る程の理不尽さや矛盾などを短い言葉でばしばしと表現していて、原文はもっともっと凄いです。これはほんの一部で、この前後に幾つか段落があります。
この博物館には戦闘機が沢山展示されていて、「人を殺すために開発された技術」のおぞましさに初めて直に触れました。