ドイツのアマゾン不買運動に思う事 |
ちらほら噂は聞こえてきていたのですが、やっと問題のルポルタージュを見ました。
私自身、近年アマゾンの利用はとても多くなっていますし、ここでもよくリンクしていますので、私の個人的な意見をここに述べてみます。飽くまでも私個人がこの番組を見て考えた事で、他の裏づけなどはとっていませんので、その点はご了承下さい。
http://youtu.be/lylInWGaPaE
ドイツ語ですので、見られない方のために簡単に内容をまとめると:
1.アマゾン配送センターでは、特にクリスマスなどの繁忙期、外国人労働者(短期出稼ぎ)が主要な労働力になっている。仕組みとしては、アマゾンの求人に、外国から応募し採用される。ところが出発二日前に、アマゾンではなく別の人材派遣会社との契約になるというメールが届く。ドイツに到着してから契約書にサインするが、ドイツ語が読めない人も多く、宿泊費プラス二食(コールドミール)付きという名目で、時給も求人に出ていたのより1割ほど安い(例えば求人では9.68ユーロ、実際には8.52ユーロ)。でも、手ぶらで帰る訳にはいかないので、言われるままにサインしてしまう。
2.仕事はかなりの能率を求められる。例えば1シフトで17km歩く日もある。仕事が少ない日には早く帰される。仕事が減ると予定していたよりも早く「くび」になって、帰国する事になる。
3.宿泊先として提供されるのは休暇用バンガローなどで、赤の他人との共同生活になる。例えば80平米の1軒に6人で住んだりする。宿泊地と勤務先との往復はバスが頼りになるが、本数も台数も少なく、席に座れないどころか乗り込めない事もある。例えば30km離れた配送センターへ45分かけて通う。自分のシフトが済んでもすぐに帰れずにバスを待ったり、遅刻しないために早くから家を出て寒風の中バスを待つ事になる。
4.四六時中見張っている独自のセキュリティーがいる。セキュリティーのメンバーには極右が多く、勤務中以外のプライベートな領域にも侵害してきたり、食堂からの持ち出し禁止を理由にかばんの中身をチェックしたりする。
5.アマゾンの給料明細には、社会保障費の対象となる、「宿泊費プラス二食」の費用が入っていない。
ここには出てきませんが、以前イギリスのアマゾン配送センターで、休憩も碌になしで働かなければいけない過酷な労働条件がニュースになった事もありました。
番組を見た時はかなりショックを受けるのですが、後で冷静に考えてみると、この番組は何もかもをごちゃ混ぜにしてセンセーショナルにし過ぎだなあと思いました。
「現代の奴隷市場」などという言葉も飛び交っていますが、それはちょっと違うだろう、と思います。
私がアマゾンに改めて欲しいと思うのは、
1.の計画的な嘘で労働者を呼び寄せるところ。1割安い時給でも所謂最低賃金を上回っており、働きたい人は充分いる筈で、嘘までついて誘き寄せる必要はない。人材派遣会社との契約になるという事も、最初から言っておくべき。
4.のセキュリティーは問題外。これは全く無要な人権の侵害。
5.に関連して、日本でも気になる報告を読んだ事があります。アマゾンジャパンは日本に法人税を納めていないそうです。
(以下、「僕が Amazon.co.jp を使わなくなった理由。」より引用)
簡単に言えば販売会社はあくまでも米法人であり、「Amazon.co.jp」は商標(ブランド)にすぎないと。
ですから「Amazon.co.jp」でいくら買っても、それは通しているだけであって実際は米法人から買い、配送などを日本法人が行っている、という仕組みなんですね。だから法人税はアメリカに払っている。
あの国この国で、最大限色々な抜け道を使っている訳です。
アマゾンはどんどん成長している超巨大企業で、利益もしっかり出ている筈。
そんな企業が人道にもとる事までしなくても、充分やっていける筈だと思うのです。
仕事自体がきつい事や、明日も働ける保障がないのは、短期雇用である誰もが承知の上の事だと思います。
私も医学生時代に介護のバイトしていた時は、常に「明日(今日)働ける?」という電話待ち。一度断れば次には電話リストの順位が下げられてしまうだろうから、電話を受ければ無理してでも働く。出勤してみても意外に暇だと、早く帰される。つまり働けるのは忙しい時だけで、それこそ休憩も満足に取れず、足を棒にして働く事が多い。週末にはバスや電車の本数が少なくて、1時間に1本だったりするから、駅でパンクに絡まれたりしながら延々と待つ。早番だとまだバスが走っていないから、真っ暗な道を半時間以上歩いて出勤する。
私の周囲にも、解雇されるのが怖くて病欠を取れず、熱があってもふらふらしながら働いている人もいれば、人材派遣会社から駒のようにあっちへこっちへと動かされている人もいます。
日本の都会の通勤事情や、会社やカプセルホテルに寝泊りして働く人の事など、ここで言及するまでもないでしょう。
これらは、女工哀史時代をはじめ発展途上の各国で今日なお繰り広げられている暴力まで駆使した労働や、労働許可のない外国人を最低賃金以下で働かせているようなものとは、ちょっと違うと私は思います。
ただ、勿論それがよい訳ではなくて、これらはアマゾンから離れて一般的な社会の課題として考えていくべき事ではないでしょうか。
例に出ていたのでは週32.5時間労働の契約でしたので、「宿泊プラス二食」の理由で引かれるのは、計算すると週37.70ユーロになります。家具付き・一人当たり13.3平米(8畳強)の共同生活プラス二食付きでその値段というのは、番組で言うように「高い」とは私には思えません。少なくとも個人で探してそれ以下の金額で寝食を確保するのは、かなり難しいでしょう。また、時給から引かれるのは、仕事が少なくて予定通り働けない日もあるのに家賃だけ定額差し引かれるよりは、まだましかという気もします。
たとえ一人部屋の寮があっても、高い家賃を払わなければいけないのであれば、雑魚寝で我慢してその分のお金を持ち帰りたい人も少なくないのではないかと思われ、これまた一概には言えない事だと思います。
「彼らは社員食堂でコーヒー一杯買うお金もない程貧乏」という言葉もありましたが、出稼ぎに来ている人というのはお金を家に持ち帰りたい人ですから、稼ぎの多少に拘らずコーヒー一杯の贅沢を節約するのは普通ではないでしょうか。
私自身、医者として働いている今でもコーヒーは魔法瓶で職場に持って行っているくちですから、コーヒー一杯買うのを躊躇う気持ちはよく解ります。
この番組では「商品を安く提供するサービスのために、多くの労働者が苦しんでいる」という取り上げ方をしていましたが、それはちょっと違うのではないかと思います。
どこをどうやって利益を出すかのやりくりは、アマゾンの企業としての姿勢ですから、商品の値段に拘らず、労働者を締め付ける事が選ばれている訳です。実際、ぶらぶら歩いて脅威を与えるだけのセキュリティーには惜しまずお金を払っている訳で、「安くしているから労働者に支払うお金がない」というのとは違うでしょう。
私自身は、アマゾン不買運動は、問題提起としてよいアクションだと思います。アマゾンはドイツの会社ではありませんから、ドイツだけでなく世界各国から一気に圧力をかければいい。皆さんも是非、どんどん情報を広めて下さい。
私達も、今はアマゾンでは買い控え、これからの対応を待っているところです。
実際、こうして皆の声が上がってきてやっとアマゾンが反応し始めた事が、新しいニュースとして入ってきています。
アマゾンのような巨大な企業が世界の市場を独占することの是非も勿論ありますが、現時点でアマゾンはもの凄い数の労働の場を提供している訳ですから、そこが労働者にとって働きやすい環境になる事がまずは大事なのではないかと私は思います。
春よ来い、早く来い。
私は、アナログなのでネットショッピングをした事がないので当然、アマゾンも利用した事が無いです。
最後の写真、花のつぼみも雪が解けるのを待ってますね。
北海道の春はまだ、遠いです。
ドイツでは、日本の百貨店のような品揃えのところはなかなかありませんし、私自身買い物に出掛ける余力も時間もなかなかないので、優良なネットショップがどんどん充実してくれると助かるのですが・・・困ったものです。
規模が大きくなると、土地と経営者が離れると、そうして自社だけ自分だけ儲ければ後はどうでもいいということになりがちなのでしょうか。権力は腐敗するというのは何も政治だけではないのですね。せめてこれを機にアマゾン側が姿勢を改めることを期待したいと思います。
そうですね。きれい事ばかりでここまで大きくはならないでしょうね。
ただ、記事にも書きました通り、それでもドイツの法に逆らわない程度の労働ですから、アグリビジネスなどのひどいやり方とは到底較べられないと思います。雑魚寝と言っても、一人当たり8畳強というのは、私の入っていた学生寮よりも広いのです。それを「家畜みたいに詰め込まれて・・・」というのは、ちょっとセンセーショナルに言葉だけ先走りさせているかなと思います。
私は恐らくもう十年くらい、ネスレやナイキ製品はボイコットして、買っていません。左の「最新のトラックバック」のところに出ている「チョコレート産業と子供の人身売買」をクリックして出る記事のところに、少し言及してあります。
ネット販売事業の第一人者・アマゾンに関する特集記事の紹介、有難う御座います。私は、ネット販売などと云う事業に対し、強い懐疑を抱いておりますので、そのアマゾンも利用した経験は皆無です。
しかし、その事業活動の実態と云えば、こうやって弱者を搾取しては、不当な利益を営々と蓄積し続けている阿漕にして狡猾な連中だったんですね。
貴重な情報の紹介、有難う御座いました。お元気で。
なるほど、そうだったのか、アマゾン、やっぱりね。書籍だけはアマゾンで買っているんですが、新刊の値段が書店や出版社で買うのと同じという点だけでも、企業姿勢として見えてくるものはありました。しっかしですねえ、なによりも書店が街から消えてしまったので仕方なく、と思いきや、街の書店を消したのはアマゾンなどじゃないか。って話ですよね。
くまさんのコーヒー持参の話、学生寮との比較の話、同感です。労働者に対するマスコミの取り上げ方への違和感、同感です。それにしても、資金力のある大企業だけが、トランプの貧民みたいに、より儲けやすい構造になっているのかしらと思います。それでも雇用の場があるのは、まだマシで、労働力不要の時代へと加速しないとよいのですが。
少しずつ春ですね。アルザスの旅、素敵ですね。
春になると色んな所へ出掛けたくなるから不思議です。
つい1年くらい前まで私は知らなかったのだけれど、ドイツの場合、町の普通の小さな本屋さんでも、うまくすれば翌日、翌々日には頼んだ本が受け取れることができます。どの本屋さんでも可能かどうかはわからないし、本屋さんが近くにある場合に限ってしまうけれど、場合によってはアマゾンよりも早く手元に届くので、ついでの時にでも本屋さんに聞いてみる価値ありだと思います。私が知らなかっただけ?と思わないでもないけれど、以外と知られていないのかなと思い、ここに書かせて頂きました。
アマゾンは便利ではあると思う反面、留守だと結局郵便局に取りに行く事になるし、かさばるパッケージや住所などが書いてあるラベル、送り状の処分が面倒だなと思います。
ありがとうございます♪
ネット販売事業そのものが悪者ではないと思いますし、記事にも書きましたように、この番組はちょっとセンセーショナルに強調し過ぎだと思います。
(例えば有名メーカーの発展途上国の農場や工場では、それこそ人身売買・児童労働から始まり、体罰も加えてのノルマなど、ひどい事が行われており、そういうものとは較べものになりません。)
ネット販売自体は、よくも悪くもこれからの未来を支える大きな軸の一つになっていくでしょうから、アマゾンが「優良企業」としてお手本を示すようになって欲しいものです。
そうですね。本はできれば手にとってから買いたいのですが、本屋さんも減ったし、品揃えも「今の流行のもの」しかないところが多くなりましたよね。
はい、私もつくづく思うのですが、金持ちが更に金持ちになるのは容易な社会ですね。
この番組、暗い音楽と「家畜みたい」「貧乏」「人間としての尊厳がない」などという言葉でショックを与えるのですが、実際の数字などはちらっと言うだけ。何度も一時停止したり戻ったりして書き留めて、計算してみたら「なあんだ、そこまでひどくないじゃない(セキュリティー以外は)」と思いました。ま、だからと言って決して誉められた待遇ではありませんが。
皆さんへの情報、有難うございます。
はい、多分どこの本屋さんでも注文できると思います。私も昔はよく注文していました。
今は本屋さんのある町まで足を延ばす事が難しくなってしまったので、アマゾンはとても便利だったのですが・・・。確かにパッケージは無駄なゴミを増やしますね。
私にとっても、色々と考え直すいいきっかけになりました。
はい、そうです。春を告げる花として特別愛されていますよね。
急にあたたかくなって、今日はこれらももう咲いていました。鳥も歌い始めたし、出勤時も段々明るくなってきて、気持ちが軽くなる感じです。
きちんとした裏付けもなく、こんなコメントをして煽動することは間違っていませんか?
私がこの記事を書いた理由は、このルポルタージュが余りにもセンセーショナルに作られていたので、「現代の奴隷市場」などの言葉を鵜呑みにしないようにという警告が一つ。もう一つはこういう不買運動はストライキのように、少しでも多くの人が参加して一気に解決させるのがいいと思ったからです。
ドイツでこのアマゾン不買運動が起きてから、アマゾンは問題の極右セキュリティー会社を解約したそうです。そういう労働環境の改善が行われるためなら、決して間違いではないのではないでしょうか。