どこで産むかという問題 |
妊娠・出産というものは病気ではありませんから、
何も問題がなければ、自宅でも医者なしでも、出産できるものなのです。
ドイツでは自宅に助産婦さんが来てくれるので、
自宅出産をする人もいますし、
病院でも外来で出産して帰宅する人もいます。
ただ、私の場合は問題がとても多かったので、
「子どもの命の安全」を第一に考えて、
近くの助産院でも小さな病院でもなく、大学病院にしました。
(ですから私達は、掛かりつけ医と見解の対立が生じた時、他の医者を探さず、
「どうせここで産むのだから」と、大学病院外来に来て、
結果的にはその後も定期的に検査を受けたり、一時入院したりする事になりました。)
出産時の緊急事態というのは、本当に一分一秒を争う位、時間がないものです。
私の出産時にも二度、こぐまの心拍数が通常の半分位にまで下がり、
それぞれ、緊急コールで医者を呼んで胎児蘇生が行われましたが、
もしそこで心拍数が回復しなかったら、
緊急帝王切開で取り出すしか、こぐまの命を救う術はなかった訳です。
私が学生時代に聞いた話しなので、今はまた違う数字になっているかも知れませんが、
その緊急帝王切開で、医者を呼ぶ緊急コールから胎児を取り出すまで、ドイツの規定は20分。
テュービンゲン大学病院ではそれが、平均8分。
手術室への移動、麻酔、消毒などが必要である事など考えると、これは凄いスピードです。
そのために分娩室と手術室を同じ階に作り、
しかも手術室からドア一枚を隔てて新生児科につながっている設計になっていて、
取り出された子どもは、即、新生児科医に手渡されるようになっています。
新生児科というのは小児科の一種ですから、
昔は当然小児科の建物に入っていたのですが、
「子どもは胎内にいる間に動かすのが一番安全(生まれてからは動かすな)」
という信念により、婦人科の建物の中に引っ越してきたのです。
緊急事態の対処のスピードが、私達の知る限り、この近辺で一番である事。
新生児科が同じ建物内にあるので、
NICUが必要となるような危険な状態の赤ちゃんでも搬送せずに済む事。
(それに、同じ建物内なら、車椅子ででも会いに行けます。)
どの科が必要になっても、高いレベルのスペシャリストがいる事。
それが、私達が「ここで産む」と決めた理由であって、
雰囲気だの何だのは、二の次でした。
実際、私が力尽きてPDA(硬膜外麻酔)をお願いした時には、
夜中にも拘らず、待つ事なく麻酔医がすぐ現れ、
私がのたうちまわっていたために用意してあった陣痛抑制剤も使わず、
殆ど立て続けだった陣痛発作の僅かな合い間に、するりとカテーテルを入れてくれました。
その手際の良さは、本当に見事で感心しました。
また、出産した時には、分娩室で私達のためだけに、
産婦人科医、産婦人科上級医、新生児科医、医学実習生(日本の研修医のようなもの)、助産婦の先生、助産婦実習生と、
6人も従事していました。
勿論、不満な点もありましたが、
こぐまの命さえ無事なら、あとは全て些事に過ぎない。
そして、他の病院での問題や無事にいかなかった例もいろいろ知っているだけに。
私達は「この病院で産んでよかった」と、断言できます。
(因みに、大体どこの病院でも「Kreisssaalfuehrung」と言って、
分娩室を案内したり質問に答えてくれるツアーのようなものがあるので、
あちこちで参加してみて「ここ」と決める事ができます。
助産婦さんは、私達は出産前には決める余裕がなく、
出産後に病院でリストを貰い、慌てて決めました。
本当は妊娠してすぐに決めておくと、
産後だけでなく、妊娠期間を通してずっと面倒をみてもらえます。)
少し話しは変わりますが、
早産のリスクがある場合は、大きな外出も避けた方がいいと私は思います。
例えば車で2、3時間の距離で、旅行とは言わないようなものでも、
救急車で戻って来るには遠過ぎる。
もし、その出先で生まれてしまったら、
出産自体はまあどこでもよいとしても、
早産の未熟児は新生児科に入れられて、なかなか退院できない。
自分も一緒に入院している間はいいけれど、
子どもだけ残さざるを得ない場合もあって、
そうなると自宅から通うのも、とても大変になってしまう。
私が切迫早産で入院して、胎児の肺を成熟させる処置を受けた時、
その処置を受ける間もない程の急な早産で、もう何箇月もNICUで人工呼吸器に繋がれたままの赤ちゃんに面会に来ているお母さんもいました。
他にも、出産時に問題が起きたり、生まれ出てきたら重病だったり、という場合もあります。
そんな子は危険で搬送できませんから、「出先」の病院に入ったきりになります。
里帰り出産も同様に、帰って来られなくなるリスクがあります。
海外在住で、日本に帰って産んでそうなったら、一家離散になってしまう。
「どこで産むか」には、そういう可能性も考えておくべきでしょう。

のどかな朝のひととき。
私の友人は2人目を出産した時に、くも膜下出血で亡くなりました。母子共に安心して出産できる体制も心掛けたいです!
オッと!私はもう一人!とは思ってませんが。。。主人は「ご希望なら~!」といつも冗談?言ってます。(私はひょっとしたら。。。くまくまさんと同年齢?かも?)
私も、二女の時に大変でした。
遠くで、産声を聞きましたが、その後、二日も記憶が無く、、、、
看護師さんが、お腹の上に乗り、下からは、医者が赤ん坊を引っ張り出し、途中で、酸素吸入をし、、、、
夫も、覚悟をしたそうです。
健康に、簡単に産む女性もいるけれど、そうでない人もいるんですよねーー
子どもを捨てたり、虐待して死に至らしてしまうニュースを聞くたびに、とても、残念な気持ちになります。
あんなに苦しい思いで得た命を、大切にしたいです。

私もいろいろな病院を見学して出産病院を決めました。大型病院も私の住んでいる地域は近くにフランクフルトなどが大きな町があるため結構選べるのですが、Infoabendへ行ってちゃんと病院を見学するのは大切だと思います。
私は4か所見学へ行って、結局Kilinikum Offenbachにしました。Offenbachは、あまりいいイメージのある町ではありませんが、病院はとてもいいです。新しい建物ですし、立て直しの際に、Kreissaalと帝王切開の手術室の隣に、小児科の手術室があり、緊急帝王切開になって、生まれた子供に何かがあってもすぐ小児科の手術室へ運ばれ、必要な場合は、即手術ができます。小児科病棟と婦人科病棟が同じフロアに設置されている階があるので、そこで母子ともに一緒の部屋に入院できたりと・・・出産する・したお母さんにはありがたい設備がありました。



私はかかりつけ医での定期健診で、切迫早産と診断されましたが、その日は夫とドイツへ里帰り(車で5時間)を予定していたので、病院へは戻ってから(3日後に)行きます、と答えたら、担当医にひどく叱られました。
結局ドイツ行きを止め、かかりつけ医から直接、出産予定の大学病院へ向かいました。再度検査の結果、即入院、肺を成熟させる処置を受けました。
入院中にNICUに連れて行かれ、早産で生まれた赤ちゃんを見ましたが、その時初めて、「3日後に病院に行く」という自分の回答の愚かさに気づきました。
町で唯一の婦人科だったという理由で選んだかかりつけの医者でしたが、本当に良い医師に巡り会ったのだと幸運に思います。
出産病院は、私も説明会に足を運び決めました。NICUがあり、小児病棟と産科が同じ病棟にある事、また州の難しい出産のケースはその病院に搬送されてくる事、が、万一を考えた際、やはり大きな決め手となりました。
まりさんのお宅は、本当に大変でしたね。
以前、国籍を取得するために海外出産がはやりましたが、今はどうなのでしょうね。
お産というのは病気ではないけれど、やっぱり母子共に命懸けの事ですから、色々な場合を考えておく事が大事だなあと思います。
本当にそうですよね。
虐待したり捨てたりする人達自身も、その昔はこういう無垢な赤ちゃんだった訳で、一体どこで歯車が狂い出してしまったのだろう、と思います。
テュービンゲン大学病院では基本的に週1回Fuehrungが行われていますが、もう参加なさったでしょうか。
「義母も分娩室に」というのは、お嫌でしたらはっきり断って構わないと思います。昔の大家族で暮らしてきたり、自分や周囲が自宅出産だったという人だと、「お産に立ち会う」という事への敷居が低いかも知れませんね。
たとえ何人子どもを産む事になっても、「このお産」は一生に一度の事ですから、自分の納得のいく形をとるのが一番だと思います。頑張って産まなければいけないのは鍵コメさんなのですから、鍵コメさんがリラックスして全力を尽くせるようにするのが最優先です。ご主人は、まだお産を未体験で、ぴんとこないのかも知れませんね。
どうぞ、お体を大切になさって下さいね。
それはとてもよい設計ですね。新しい病院はどこも段々とそうなってきていると思います。
小さな病院に新生児科がないのは当然としても、分娩室からエレベーターで別の階の手術室に移動、という病院もまだまだ多いのです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
有難うございます。
こちらこそ、これからも、どうぞよろしくお願いします。
御指摘有難うございました。患者さん思いのお医者さんでいらっしゃいますね。
私がここであげたのは単なる一つの例であって、「何箇月も人工呼吸器に繋がれたまま(=搬送不可能)」という状態が、特別な難病奇病でなくとも起こり得る事であり、その可能性も一応考えに入れておくべきだろうという意味で出しています。
一言に「早産」といっても勿論、ステロイドを打たなくても人工呼吸器が必要でない子もいれば、ステロイドを打っても人工呼吸器が必要になる子もいるのは自明の事で、私も「ステロイドを打たなかったら人工呼吸器に繋がれる」とは書いていません。(文の1行目と2行目は時間的な並列です。また、2行目に関してはそのお母さん自身の言葉の伝聞ですので、「処置を受ける間もなく早産」「人工呼吸器に繋がれたまま」という二つの事実も、私の文では単純接続にして因果関係では結んでありません。)
尚、「訂正」とは「まちがった所を直すこと」ですから、ここには適さないと思います。ただ、私が妊婦さんを責めているように誤解されるのは心外ですので、表現を少し変えておきました。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
それはよいお医者さんに掛かられましたね。
医療関係者でない限り、「早産」と言われて思い浮かぶのは「予定日より早く生まれるから子どもが小さい・未熟」という位で、それが実際に何を意味するのか具体的にイメージできないのは、愚かでも何でもなく、仕方のない事だと思います。
無事の御出産、本当によかったですね。

昨日、フランスのTGV(ICEみたいな特急)で旅行中だった妊婦さんが、列車内で無事赤ちゃんを産んだというニュースを見ました。途中、医師たちが駆けつけるまで列車が30分ほど止まったそうですが、「問題の無い」お産で本当にある意味では幸運なママさんだったのだと思いました。
ちなみに、列車内で産まれた赤ちゃんには、18歳まで国鉄が無料で使えるパスがプレゼントされたそうです・・・。
お体の方はいかがですか。出産後の数ヶ月は結構不思議と張り切ることができて、あれこれできちゃうものですが、疲れはその後ドーンと襲ってくることもありますので、どうぞご無理のないようにお過ごしください!

「海外出産のために来た!」と言う方は今のところ知りません。駐在で来てみえる方が「アメリカにいる間に出産したい!」と言ってがんばってみえる方は知ってます。でも、その子供がアメリカで一人で生活できるようになってから両親を呼び寄せることになると思うので、しばらくは「国籍」だけ取得になりますね。出産費用は自費で$5.000くらい(自然分娩で何も問題が無かった場合)すると主人に聞いたことがあります。(きっと他にもお金がかかりますよね。。。)
「最近はネイティブな英語を話さないと差別されるからね~。」とも言ってました。
海外生活。。。いろいろありますね。

来月出産を控えている日本里帰り中の妊婦です。
私は日本に里帰り中に妊娠が分かり、
胎盤の位置や複数ある子宮筋腫などで
日本のドクターから飛行機に乗るのは危険だと診断されました。
ですので欧州在住の夫とは出産直前まで離れ離れです。
遺伝の事もあり、小児科の体制が整っている総合病院で出産予定ですが、
もし子どもになにかあれば、くま先生のおっしゃる通り、
家族離散という状態になるかもしれません。
しかしこどもの事が最優先です。そのときは夫と離れてしまいますが
どうしようもないことです。
欧州への帰国に際しても予防接種の心配、他国での乗り換えなど心配はつきません。
もしクマ先生が私と同じような状況で、欧州へ帰ることが出来ず、
日本で出産することになったらどうなさいますか。
そうですね。飛行機でも、機内で出産すると大人になるまで無料で乗せてもらえる会社があるらしいのですが、それは矢張り余程の幸運がなければできない事ですよね。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
本当に、いろいろありますね。
出産費用も、何かあった場合には桁違いになりますし・・・。
それはご心配ですね。ご主人と離れ離れの妊娠生活も、さぞ大変だった事でしょう。
もし私が同じ状況だったら・・・即答:オリーブさんと同じ結論で、子どもの命の安全が最優先です。
たとえ安定した妊娠で「飛行機に乗る」という行為自体に問題がないとしても、飛行機に乗るという事は、救急車の呼べないところで過ごす・病院から隔離されてしまうという事なので、私自身は妊娠中にはなるべく乗りたくありません。ましてやドクターストップがかかったのでしたら。
そして、来月ご出産予定でしたら、もう心配事はちょっと横に置いておいて、どっしり構えて待つしかありません。無事に生まれてきてさえくれたら、帰国はきっと何とかなります。
安産を、そして一家揃って欧州への無事ご帰国を、お祈りしています!
(ご質問にはもう「日本で出産する」という答えが入っていて、それ以上答える余地がありません。勝手ながら「欧州へ帰ることが出来なくなったらどうするか」にお答えしました。もし、日本での出産の細かい内容に関するご質問だったのでしたら、お手数ですがもう一度具体的にお願いします。)

無事のご出産おめでとうございます。
お忙しいだろうと思って、コメントは
控えておりましたが、結婚記念8周年の
お祝いも申し上げたくて、出てきました。
合わせておめでとうございます。
ベニさんとの二人三脚で、育児にとりくんで
いらっしゃるのでしょうか。
毎日を楽しんでいらっしゃる御様子が伝わってきます。
ドイツの育児休暇は、きっと日本とは格段の差でしょうね。
どうぞ御身体お大切になさってくださいね!
あたたかいお言葉が心にしみわたります。
妊娠・出産は病気ではないだけに、素人は甘く見てしまいがちだし、見学しても雰囲気などの些事に目を奪われがちだと思います(自戒をこめて!)。私の場合、妊娠中のリスクは高齢のみでしたが、最後は「心拍数が回復せず緊急帝王切開」となりましたから、町内では最も設備が整っている産婦人科・小児科病院にしておいて正解でした。帝王切開と決まってからの展開はとても速かったし、生後すぐに小児科医が赤ん坊を診てくれたそうです。
用心すれば救えたはずの小さな命が失われてしまうのはいたたまれないですね。Frauどくとるくまの文章を読んで、慎重になる妊婦さんが増えるといいな、と思います。
そうですね。決して大病院ばかりを推薦する訳ではありませんが、命にかかわる事ですから、万が一の事も一応考えて決断するのは大事だと思います。penguinophileさんも、そこに決められて本当によかったですね。