妊娠初期の出血と命の重さ |
職業柄、流血を見慣れている私ですらたじろぐ程の、
鮮血の大出血を妊娠初期に繰り返しました。
便器一面に血が飛び散って真っ赤になり、
絶えず流れ続ける血のせいで、便座を汚さずに立ち上がれない程。
夜用ナプキンが溢れ、ベッドに血の池ができる程。
その様子からいって、恐らく小さな動脈が破損したのだと思われました。
そして、一度破れた箇所というのは、また破れやすい。
母体の命に係わるような大出血である場合は、病院での処置が必要ですが、
脈拍や血圧から、そうでない事は判っていました。
ただ、お腹の中の小さな体にとっては、
少しの出血でも命取りになる場合もあり、
胎盤など、胎児にとって大切な箇所からの出血だったら一大事。
でも、どこから出血しているのかは検査しても判らない事が多いし、
止血も不可能な事が多いのです。
唯一できる事は、安静にして、
血管がまた破れないように、力が掛からないようにする事。
だから、自主的にベッド安静。
重力で子宮が圧迫されるのを避けるために、上体を起こす事もなるべく避けて平らに寝、
唯一起きるのは、トイレ・洗面・シャワーだけ。
シャワーも床にぺたんと座って浴び、
食事もベッドに寝転んでとる生活を続けました。
それらにどれだけの効果があるのかは判らないけれど、
たとえほんの僅かな効果だったとしても、それ以外にできる事はないのだから。
そして、子宮の収縮を防ぐために、マグネシウムを服用しました。
大出血の度に「もう駄目だ」と観念して何度も泣き、
前回の流産の記憶も生々しく、
トイレの度に血の色と臭いに悩まされ、
トイレに行くのが怖くなり、行けなくなり。
大出血を繰り返した後も、だらだらと少量の出血が続き、
ようやく止まったのは、とうに「安定期」に入った、一箇月以上も後の事でした。
毎週の検査に、「まだ生きているのだろうか」という思いで通い、
超音波写真を見ては、「この子が生きていた証は、これしか残らないかも知れない」と思い、
その一枚一枚が、貴重で愛しく。
私には沢山の小さな子宮筋腫があったので、
これも不安の大きな一因でした。
(筋腫というのは言わば異物ですから、
胎盤がしっかり「根」を張れなかったり、剥がれ易くなったり、
異常な刺激になって、流産や早産を引き起こし易くなったりするのです。
だから、普通だと妊娠中も適度な運動をすすめられますが、
子宮筋腫がある場合は、比較的安静にしなくてはならない事が多い。
そして妊娠初期にはよく、子宮筋腫もホルモンの影響を受けて成長します。)
実は、掛かりつけの婦人科医は、
「出血は胎盤とは関係ない」
「出血が止まるまでは病欠(=出血が止まったら勤務可能)」
「安静は必要ではない」
という見立てで、
子宮筋腫が沢山あるのも知りつつ、無視して一度も診ず。
病院への紹介も断られました。
それを強引に、自力で病院の外来予約まで漕ぎつけ、
子宮筋腫もそこできちんと診てもらい、
休職への同意も「当然」と貰いました。
(そしてそこで初めて、
子宮筋腫のうちの三つが胎児以上に急激成長し、
直径10cm近くにもなっていた事が判りました。
オレンジ大のものを3個も抱えていた訳です。
その後は、病院でも検診を受ける事になりました。
休職についての説明記事はこちらです。)
出産時。
そういう事情を知らない助産婦さんが、出てきた胎盤を見るなり、
「妊娠中に出血しましたか?」と。
胎盤に出血の跡が残っていたそうです。
やっぱり。胎盤だったのか。
もしあの時、掛かりつけ医の言うとおりに、
安静にもせず、
出血が止まったらすぐ働き始め、
通勤で毎日片道1時間近く車で振動を与えていたら。
本当にぞっとしました。
出産後の検診で、掛かりつけ医に再会し、
「あの出血は、やっぱり胎盤からでしたよ」と言ったら、
「超音波では全ては見えないからね」と。
全てが見えないからこそ、大事をとるべきではないのか。
命を扱っている以上、安易に「大丈夫」と片付けてはならないのではないか。
たとえ今迄の出血が大丈夫だったとしても、
次の出血が大丈夫だという保証はない。
勿論、本当に大丈夫だったかも知れないけれど、
大丈夫でなかった場合に失われた命は、二度と戻っては来ない。
それは決して「仕方のない事」ではなくなる。
受精卵なら廃棄してもいいとか、
妊娠初期なら中絶してもいいとか、
そういう決まり事の中で動いている世界で、
未だ生まれぬ命に対する感覚が狂っている気がします。

大出血が始まった時、2cm足らずだった、こぐま。
私の小指の先ほどの大きさで、
まだ手足も芽のような突起があるだけでした。
妊娠初期の、まだ「胎児」とすら呼ばれない、小さな命。
それでも、それはもう、こぐまだったのです。
その命の重さは、その時も今も変わらない筈。
(写真:生後約2箇月1週)
追記:
「妊娠初期の出血」で検索してこの記事に辿り着いている方が結構多いようなので、少し追記しておきます。
出血に関する判断は素人には難しいので、妊娠中に出血したら自己判断せず、すぐに掛かりつけの婦人科医や病院に行くようにして下さい。私のような大出血で移動に不安がある場合は、救急車を呼んでもいいと思います。
一般的に言って、
新しい出血の場合は、怪我をした時のような鮮やかな明るい色で、まだ凝固していないのでさらさらです。
古い出血が子宮内に血溜まりを作っていて、それが出てくる場合は、やや茶色っぽく汚い色で、どろりと凝固した固形物が混じっている事もあります。
完全な流産の場合は、生理時のような固形物が混じってくる事が多いです。
最初の、シンプルな気持ちに戻りたいですね。
子どもが大きくなる過程で、色んな発見がありますよね。
私も長女の時、初期に軽い出血をしました。
ユックリと、寝ている事だけを大事にしましたが、命を体内で育てる大変さって、簡単に出産する人には分からない事かもしれないですね。それに、生まれた子を、捨てたり、あるいは、虐待、放置、、、、、信じられません。
私も出産が大変だったので、無事に生まれた子どもは、大切です。
もう35歳の長女をみると、たまに、お腹の大きかった頃を思い出します。
クマさん、、、、、、幸せそうな写真を見せていただき嬉しいです。

我が家は、今日は、長男&次男・・・高熱、娘・・・手足口病、三男・・・トビヒ&手足口病で、テンヤワンヤです^^;

時々覗かせていただいています。
生まれましたという記事を読んで、ほっとして何だか涙た止まらなくなってたら、
私にも小さな命が授かっていて驚きました。
年齢はちょっと高めだけど、極めて順調に進んでいるほうなんでしょうね。
最近はやっと、仕事だけ何とかという状態からは出てきたのようなので、
ちょっとほっとしているところですが、まだまだ自覚には薄いところです。
それも幸せなことなんですね。
私たちにとってはちょっと“意外”なことではあるのですが、
今、この私たちのところにやってきてくれた子に会える日を
あと半年、楽しみに待ちたいと思います。
そしてくまさんの優しいお顔が、今の私には神々しく感じて仕方ありません。
子供が健康に生まれてきてくれただけで、感謝したあの日。
忘れたわけではないけれど、年々欲が出てしまいます(笑)
でも、
やっぱり健康でいてくれるだけで嬉しいです(笑)
私もやっと日取りが決まり、家族を持つ事を日に日に意識するようになっています。
今年はありえないくらい寒い冷夏ですが、(NRWはもちろん雨も多いです)素敵な夏をお過ごしください。
本当に。私自身もこうして産み育ててもらった訳で、生かされている命なのだなあ、と、しみじみ思います。
そうですよね。
私は医学の道という「自分の都合」で高齢になってしまったので、私のせいでこぐまの命を危険にさらしてしまったのだという自責の念に苦しみました。
それでも無事に生まれてきてくれて、本当に感謝です。
うわー、それは本当にテンヤワンヤ。どうぞ皆さんお大事に~。
それはそれは、おめでとうございます!
どうぞお大事になさって下さいね。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
うふふ。そういうものなのでしょうね~。
いよいよですね!
その日の写真なども、楽しみにしています♪
それに応えるだけの生命力を維持し、発揮したこぐま君、
本当に本当にどちらもご無事でここまで来られて良かったですね。
素敵な写真です。とても穏やかで。
様々な理由で出産まで安静にして過ごす妊婦さんに比べて、
私は恵まれて仕事を続けましたが、
2度、それぞれ2週間に渡って切迫流産のおそれで休みました。
高齢出産でそれだけで産休までこぎつけたのは
本当に運が良かったのだと、改めて実感しました。
今から思えば双子分の胎盤! 大きいねと驚かれたそれは、
(出産直後見せてもらいました)必死で一人の子供を支えた胎盤の証、
隠れた物語があったのかもと、懐かしく思い出しました。

くまさんの記事を読んでいて思ったんですが、くまさんのかかりつけ医のような人は、どの国でもめずらしくないと思います。くまさんの場合、医学の知識と行動力・判断力があったからこそこぐまちゃんが健康にうまれてきたのですよね。他の誰でもないくまさんがこぐまちゃんを守り抜いたんだ思います。
そのことを考えると、医学の知識のない、自分で判断のできない妊婦さんはどうすれば良いのでしょう。これまでに、医者の“大丈夫”という安易な判断で一体どれだけの命が消えていったんだろうと考えてしまいました。


くまさんもとっても素敵な笑顔!!!
くまさんのブログを読んで、いろんな感情の涙を流した私です!
本当に素敵な写真ですね!
まだ先の話ではありますが、この記事をよんでとても勉強になりました。。同じドイツという意味でも心強いです。最語の幸せな写真も心をうちました。
妊娠初期は、ホルモンバランスも大変動しますし、つわりもあって、闘わなければならないのが精神的にとてもつらかったです。
夫の支えもあり、運よく私は闘い抜く事ができましたが、できない人はどうするのだろう・・・と、暗澹たる気持ちになりました。
はい、正にそこなのです。夫と何度も繰り返し話し込んだのも、テーマはそれでした。
実は、そういう泣き寝入りの「素人妊婦さん」達のために、私達が訴えようかと真剣に話していた程です。(恐らく逃げ道があって、私達が敗訴するでしょうけれど、それでも訴えられるというのは大変面倒な事ですから、その後少しは「大丈夫」にブレーキがかかるかな、と。)でも、ちこさんの仰る通り、こういう医者も全く珍しくはなく、その人一人を訴えても仕方がない部分もあります。
私は婦人科医選びを全く重視せず、当時空きがあったところに行ったのですが、実際には心ある医者も沢山います。ですから、「素人さん」は、医者選びを真剣になさる事が一番かと思います。
有難うございます~。
私も、こぐまを初めて抱き締めた時には、それまでの長い長い道のりを思って、そしてそれでも生まれてきてくれた感謝で、おいおい号泣してしまいました。
有難うございます!
まりさんも、あそこには書いておられない色々な気持ちがあったのだろうなあと、お察しします。
こういう話しは同じ悩みを抱えている人の不安を煽ってしまうかなあ、という躊躇いも大きく、この記事も随分寝かせて推敲を重ねました。でも、そういう事もあると知ってさえいたら、失われずに済む命もあるかも知れない、と思って出しました。
因みに、妊婦には「規則的に5kg以上、または時々10kg以上のものを自力で持つ」「よく伸びをする、かがむ、絶えずしゃがむ、かがんだ姿勢を維持する」「妊娠5箇月以降は、日に4時間以上の立ち仕事」などは法律で禁止されており、雇用主は妊婦にそれ以外の仕事を用意する義務があり、無期限契約の場合は解雇も禁止されています(詳しくはMutterschutzgesetzのAllgemeines Beschaeftigungsverbotに)。
ですから、妊娠かな?と思ったら待たずにすぐにテストして、陽性だったら即仕事場の方に仰る事をお薦めします。

脱帽です。でも本当にこぐまちゃんが無事に生まれてきてくれたことが
嬉しいです。
今回の妊娠中に私も何度か出血しましたが、ありがたいことに特に大きな問題はありませんでした。
しかし血の赤い色ってものすごく不安を駆り立てられます。一度心音が確認できなかった時は目の前が真っ白になりました。その後すぐにエコーで無事を確認できましたが。
くまさんと旦那さんによって守り抜かれた命の可愛いこと!ぽちゃぽちゃですね。
命の重みを見失っている人に見てもらいたいブログです。
私は明日、帝王切開で出産予定です。無事に会えますように。
こぐまちゃん、大きな目で、何を見つめているのでしょうね。
命って、力を尽くして守るべきものだと思います。
はじめまして。有難うございます。
黒い森の職場から、今は離れてしまっていますが、
これからも、どうぞよろしくお願いします。
おおー、明日!(今日!)
皆さんの笑顔の写真がアップされるのを心待ちにしています。
フレー、フレー♪
本当に。命の重さを改めて考えさせられました。
いつもあたたかい一言、有難うございます♪



私達夫婦はまだ仕事に夢中で子供はいませんが、将来妊娠したら今回の記事はよく覚えておこうと思います。私のまわりにも流産した人達が沢山いるのですが、もう少し医者選びを真剣にしていれば、ちがう結果になっていたかもしれません。もちろん全て医者のせいだったなどとは言っていませんが…。考えてみたら医者も人それぞれなのは当たり前で、慎重な医者もいればリスクをとりすぎる医者も沢山いるのですよね。
くまさんの婦人科医を訴えるまでいかなくとも、こうしてくまさんがブログをアップしてくださることによって、患者・妊婦さん側がもつ意識は変わってくると思いますよ。少なくとも私は勉強になりました。
それはおつらい体験でしたね。
周囲を見まわしても、本当に色々な医者がいます。
そして根底には、金で動く保険制度や社会の問題があります。
良心に基づいてやっているが為に赤字を出す医者もいますし、私でも働いていた時には保険会社からのクレーム対応が大変でした(私が最善だと思う治療を「高いから支払わない」という保険会社)。
そういうシステムに慣れて、良心を失っていく、或いは目をつぶってしまう医者もいます。
でも、どんな理由があろうとも、命の安全だけは最優先されるべきだと私達は考えています。
有難うございます。
そう仰って頂けると、記事にした甲斐がありました。
きりっとした賢そうなお顔です。
こぐまちゃんだけありますね。
くまさん、とってもお幸せそうです。
命ってスゴイって感動しました。
お褒めの言葉、有難うございます~♪本当に命って凄いです。
今生きている全ての人がこうして生まれてきたのだなあと思うと、改めてその重さを感じました。

かかるお医者さんによって、助かるはずの命が失われてしまうこともあるのかと思うと、正しい知識や情報を持つことの重要性をとても感じます。そういった意味でも、このような記事はとても貴重だと思います。
はい。生まれてきてから当時の事を思い返すと、妊娠初期の命が軽く扱われていた(/いる)事に改めて愕然とします。
こういう経験をさせてもらった私達にできる事は何だろう、と、よく考えます。

読みながらもし流産だったら…と考えただけで怖くなり、予約などを待たず明日朝イチですぐ総合病院に行こうと思います。
不安で涙が止まりません。
それはご心配ですね。
赤ちゃんが無事である事を心からお祈り申し上げます。