2011年 03月 22日
日本の報道・ドイツの報道 |
日本とドイツ(或いは他の外国)の報道内容の違いや、それによって生ずる意見の温度差について、他のブログでも、こちらのコメント欄でも、色々と論じられています。
ドイツ在住で「何を信じたらいいのか判らない」という方や、
日本バッシングを恐れ、外国に対して疑心暗鬼になっている方も沢山おられるようです。
私の個人的な意見も何度か訊かれましたので、
コメントのお返事と重複する部分が殆どですが、改めてここに少しまとめてみます。
今回の事に限らず、色々な事件が起きると、
新聞社の書き方によって、随分と事件への印象が変わるのにお気付きでしょうか。
昔は「うちは○○新聞」だったので、余り意識していなかったのですが、
ネットで気軽に読み較べができるようになって、その差に改めて驚きました。
ましてやそこに、「お国の事情」が絡んでくると、当然かなりの温度差が生じます。
私はテレビは見ません。
テレビというのは、センセーショナルにしようとする色付けが濃く、
しかも繰り返しが多くて刷り込まれているみたいですし、
文書として残りませんので、聞いた時の印象だけが残り、細部の記憶はあやふやになってしまう。
私自身は大手新聞社などのサイトを幾つか読み較べ、
その新聞社の政治色や、国の事情・背景などを考慮して、
自分の頭の中で足したり引いたりして、真実に近いものを推測するようにしています。
今回の原発に関する報道については、
一番最初の日本の報道は余りにも遅く乏しく、ドイツの報道の方がしっかりしていました。
そしてその後、日本がもう少しきちんと発表するようになってからは、
逆にドイツの方が煽る事を書き過ぎで、日本の報道の方が普通に近くなったという印象を受けます。
そこには、原発問題が政策の重要な位置を占めるというドイツの事情があり、
「脱原発」路線から「原発運転延長」路線に変えたばかりという微妙な時期でもあり、
反対派にとっては、今回の事故によって原発反対を叫ぶ正当な理由ができた訳で、
この機を利用しようとする者もいるという、政治の絡みもあります。
逆に原発を推進している他の国々では、
「日本の」「この原発の」まずい点を前面に出して叩く事によって、
「我が国は大丈夫」と強調しようとするので、
恐らくそちらの方が日本のバッシングは起こりがちでしょう。
日本は、国民を不安にさせまいと、最初は「大丈夫」と隠し続け、
その後隠し切れない、信じ難い唖然とするような事が次々と起こり、
すっかり信用を失ってしまい、批判されても仕方のない状況を作ってしまった。
また、外国に対する説明の必要性を感じていないのか、日本政府の外交下手がそこに拍車を掛けています。
そういう双方の事情を考慮しながら読み較べると、見えてくるものがあるのではないでしょうか。
ただ、例えばドイツ人なら、ドイツの報道しか知りませんし、当然それを鵜呑みにする。
放射性物質の話題に、マスクをしている沢山の日本人の写真がついていたら、
日本人なら「花粉の季節だからなのに・・・」と気付くけれど、そういう引き算はドイツ人にはできません。
(ドイツでは花粉症や風邪などでは普通マスクはしません。)
遠い異国の地ですから、そういう知らないが故の誤解も色々とあります。
しかも以前大事故のあったチェルノブイリはヨーロッパに近く、
実際に南ドイツでは被曝対策がとられたりして、人々の記憶に生々しく刻まれ、トラウマとなっています。
ですから、ドイツ人の放射能に対する恐怖はとても大きく、
地震津波の最初のショックが過ぎたら、原発の方にドイツ人の関心の重点が動いてしまうのは、仕方のない事でしょう。
私は誰からも言われていませんが、「何故家族をドイツに呼び寄せないのか」と言われる在独日本人も多いようですし、日本を引き揚げる在日ドイツ人も沢山いるようです。
苦々しく思ってしまうでしょうけれど、そんな事情があっての事ですから、なるべくなら聞き流して欲しい。
ドイツはもともと反核運動の強い国ですが、
この場合の反核は、「ドイツの原発をストップさせる事」を意図していますので、
たとえ日本を例に挙げていても、基本的には「反核=反日」ではありません。
例えば今後、日本からドイツへの輸入品には色々と検査がつくかも知れませんが、
それは「反核故の反日感情」の表れなのではなく、ただ単に放射能が怖いからだと私は思います。
そして、日本にいる方から見ると、海外在住者は気楽だと思われるかも知れませんが、
実は両国の意見の板ばさみになって、議論好きなドイツ人の質問の矢面に立たされ、
しかも離れて暮らす日本の家族の事が心配で、周囲からはその心配を更に煽られ、
とても辛い思いをしている人も沢山います。
私にも、家族をはじめ大切な人達が沢山首都圏にいます。
今の段階では、私は避難を呼び掛けてはいません。
勿論、ゼロでない限り「全くの無害だ」とは言えません。
原発事故によって放出される放射性物質は、様々なものの集まりですから、
医療で使うように作られた「純粋な」放射性ヨウ素や「放射線だけ」のレントゲンとは違い、本来そう簡単に較べられないものなのです。
(それでも較べない事にはさっぱり見当がつきませんから、便宜上較べている訳ですが。)
僅かとは言え、水や大地の汚染が出てきた今は、「これからどの程度まで汚染が進むのか」という不安もあるでしょう。
ただ、ドイツのダイオキシン卵問題の時にも書きましたが、現代社会では様々な汚染があり、まるきり清浄な土地や食べ物など存在しませんから、その中で自分の許容範囲を決めて生きていくしかない訳です。
「被曝からの避難」という意味ではなく、他所の地域へ短期間移動する事は、
節電や食糧事情などの面から見ると、首都圏の負担を軽減する事になって、よいかも知れません。
子ども達が春休みで、実家や親戚が西日本にあるのなら、そちらで暫くのびのび過ごさせるのもいいでしょう。
というのが、私の今の個人的な意見です。
そして、今の日本の報道は、随分よくなったと思います。
医学的な事でも、専門家による一般向きの解説もしっかり載るようになって、
もう私なぞが情報をかき集めて解説する必要もなくなったと感じています。
(私が放射線やヨウ素について書いた時点では本当に情報が乏しくて、ニュースにも専門家の解説がなかなかついておらず、ネット検索しても、見つかるものは専門家の専門家向きのものか、素人判断のいい加減なものが大半でした。)
我が身を放射線の危険に晒しながら、踏みとどまって懸命の活動をしてくれた現場の人達のお陰で、ようやく原発も最大の危機を乗り越えたようです。
そこで、次からはもう少し日常にかえった記事にする予定です。
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■ドイツで折鶴募金を始められた、まさみさんの奮闘ぶりはこちら。
■フィンランドで街頭募金活動をされた、すーぱーふみふみさんのレポートはこちら。
それぞれ、現地の人達の協力や反応の様子に、心あたたまります。
外国に対して疑心暗鬼になっている方は、是非読んでみて下さい。
3/18のドイツ赤十字の報告によると、日本のために1週間で既に290万ユーロの募金が集まったそうです。これは、1ユーロ=114円で計算すると、およそ3億3千万円にもなります。
ドイツの人達は、それだけ日本の事を思っているのです。
外国というのは、色々違うが故に誤解も生じやすいけれど、そんなに怖がらないで下さい。
「日本赤十字から要請がないので、募金も日本に届かないのではないか」という心配の声が最近出てきているのを受けて、
ドイツ赤十字社から日本赤十字社にきちんとお金が届くのかという点を、まさみさんが改めてドイツ赤十字社に確認して下さいました。
「募金の10%はVerwaltungskosten管理費としてドイツ赤十字の母体を支えるために引かれますが、残りのお金は義援金として日本赤十字を通して被災地に届けられます。
(他のどの機関を通じても一般的に10%ひかれるようです。)
日本赤十字に渡ったお金は被災した自治体の義援金分配委員会に送付され、現地でさらに必要な物資や資金として分配されます。
日本の今回の被災地救援のために集められたお金は日本赤十字にちゃんと届きますが、日本赤十字からの要請がない限りドイツ赤十字の人間が現地に出向くことはありません。」
との事です。
ドイツでは、目的を定めての募金を他に転用する事は許されない筈ですので(とドイツの他の団体で働く友人から聞いています)、「日本のための募金は日本に届く。人や物資による救援は要請があってから」というのは、私の認識とも一致しています。
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先日から御紹介している
■焚き火小屋の備忘録「原理の理解のために。もしくはサバイバルなロケットストーブの作り方」の漫画解説ヴァージョンです。
↓
■山の子「特別編<被災地に届いて。瓦のキッチンストーブの作り方>」
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医者に行った帰り道に、沢山の春を見つけました。




コメント欄は一回休み。
by germanmed
| 2011-03-22 16:41
| 東日本大震災


