私は昔、ジェットパイロットになりたかった。
でも当時は男性社会で、狭き門で、
「女性は頑張ってもセスナの遊覧飛行がせいぜい」と言われ、泣く泣く諦めた。
それが、その後どうよ。
格安航空会社が続々できて、パイロット不足になった。ちぇっ、やられた!
と思っていたら、
今度はコロナで、仕事のないパイロットがトラックを運転していたり。
医者ならまずまず安定しているとはいえ、
私が医学部に在学していた頃のドイツは医師過剰で、就職は大変だった。
それが、あれよあれよと言う間に医師不足になり、どんどん拍車が掛かり、
逆に医者が「これ以上は無理!」と悲鳴を上げる位になってきている。
何しろ、地域の家庭医の集まりで、
「30年間家庭医として働いてきて、ここ1、2年の仕事量は初めての経験」
という発言に、皆が頷いて同意していた位。
在学中、「ドイツは高齢化が進んでいるから、空き家が増える一方。
不動産の価値は下がるから、持ち家は財産にならない」
とプロからアドバイスされていた。
確かに数字から言うとそうだったのだけれど、
その後、外国人がどっと流れ込んで、突如住居不足になった。
そしてバブルと言われる位の建築ブームになり、
私達が古い家を買ったのも、改築したのも、
滑り込みセーフだったけれど、既に高くなってきていて、
今はもう、買うのも建てるのも、目の玉が飛び出るような値段になっている。
そんなこんなで、色々な経験を重ね、つくづく思うのは、
私には、経済はやっぱり予測不能。
だから、先を読んでの金儲けとか投資とか、
私にできる訳がない、手を出さないに限る、と思っている。
そして人生、予測とかアドバイスとかより結局は、
何よりも「自分が何をしたいか、何が欲しいか」なんだな、と。
代々ここに住んでいる人達が、医院ができるなんて予想だにしなかった小さな村で、
しかも大通りでなく、通り抜け禁止の小さな脇道に、開業。
患者さんがついている医院を引き継ぐのではなく、全くのゼロから。
今のトレンドに反して、自宅と医院が一つの建物。
手を広げる気はないので、ギリギリの小ささ。
その割に、お金がかかる贅沢な作り。
あれもこれも、銀行やファイナンシャルアドバイザーからは「正気かよ?」
という感じの反応だったのだけれど、私はいけると思った。
この地域の人口や医師不足の具合、医院の運営経費の予想などの数字を並べ、
プレゼンし、かなり渋られたけれど、巨額のローンを通させた。
そんな凄い数字は出していないけれど、
今のところ食べていけて、ローン返済ができているので、それで充分。
こんな田舎では、自費治療の鍼灸の需要はないな、と諦めていたのに、
鍼灸の患者さんが増える一方なのは、嬉しい驚きだった。
最近は物価の上昇が凄くて、お金の価値がどんどん落ちていくので、
その前に借金したもの勝ち、みたいな感じになってきた。
何がどう転ぶか、本当に人間万事塞翁が馬。
儲けたいとは思わないけれど、家族を背負っているし、
医師不足の今ここでも倒産する医院もあるので、或る程度の金勘定は大事。
困っているからと自分の24時間を差し出していたらこちらが壊れてしまうので、
線引きは大事だけれど、時にはその線を越える事も大事。
その辺のバランスを見極めつつ、
何より「この仕事が好き」と心から思えるから、やっていけているのかなと思う。
そうは言っても、諸々の事情に追い込まれなかったら、
気が遠くなりそうな巨額の借金をしての開業なんて、思い切れなかっただろうな。
と考えると、あれらの苦しい経験にも、やっぱり感謝。

遺族の方が「死後に持って行くようにと言付かっていたので」と、
私とスタッフに、それぞれ一つずつ花束を持って来て下さった。

四半期の締め日でした。ドカンとプルドポーク。
次の四半期から新しいネットワークシステムが始まるので、
ソフトウェアのアップデートはまたも大混乱でした。
今回まずは病欠届の電子化。続いて処方箋や紹介状も電子化される予定。
