幸せな時間 |
「十年一昔」とはよく言ったもので、
十年経つと人は何故か振り返ってみるものらしい。
結婚して憂いなく幸せに溢れていたのは、ほんの1、2年で、
その後はずっと、長い長い試練の時でした。
まず、医学生最後の年の実習で、精神的に「これでもか」という位傷めつけられ、ふと「私達、一体いつから声を出して笑っていないかな?」と言って、二人で「うーん・・・」と考え込んでしまった程。
それから夫が病み始め、
私は働き始めていっぱいいっぱいになり、そんな夫の状態に気が回らず。
兄こぐまの妊娠中、私が出血で安静にしている間、夫も何もできず、
家中に物が積み上げられ、埃が溜まり、
人が歩くところだけ獣道のように埃がない状態でした。
夫の風貌も変わり、今見るとまるで浮浪者かという人相に。
夫はもともとは陽気で社交的だったのに、
いつの間にか交友関係もどんどん途絶え。
兄こぐまが生まれてからも、夫はまるであてにならず、
今聞けば、当時の記憶も殆ど自分の事しか残っていないらしい。
夫は私に心配をかけまいと黙っていて、
無理を重ねても出来る事はどんどん減っていき、
私は訳がわからないまま、夫が出来ない事を引き受けていき、
いつしか仕事と育児と家事を殆ど一人で背負い、
ちぐはぐになっていく夫の言動もカバーし、
そこには焦燥ばかりがありました。
夫が倒れて救急車を呼ぶに至り、
初めて夫の病が浮き彫りになり、
「廃人になった夫を抱えて一生過ごす」という最悪のシナリオも覚悟しました。
愛する者が正気を失って笑う姿や、
真っ青な顔で病院のベッドに横たわっている姿を目にした時、
「もう無理しなくていいよ。笑顔で生きていてさえくれれば、それで充分」
と、私の覚悟は決まりました。
でも、そこで覚悟を決めてからは事態が好転し、
今は長い長いトンネルの終わりに近づき、
少しずつ光が見えてきた感じです。
夫は慢性疼痛患者です。
倒れてからきちんと疼痛治療を受け始め、
現在は鍼と高用量のモルヒネのお陰で、まずまず普通の生活が送れるようになりました。
夫が子ども達とパンを作っています。
そんな幸せな時間がある事が、とても有難いのです。
そういう意味で、結婚した時の有頂天な幸せより、
結婚して十年経った今の方が、もっと幸せです。
私自身、兄こぐまを産んだ後は全身の痛みが続き、
一番ひどい時には手の指一本動かすにも涙がこぼれる程でしたし、
妹こぐまを産んだ後は、痛みでものが噛めなくなりましたが、
何とかおさまり、私まで慢性疼痛患者にならずに済んだのは幸運でした。
旦那さまも今は、元気そうでなによりです。
くまさんもお子さん達がいたから頑張れてこれたんでしょうね。
パン作りの写真、楽しそうでいいですね!
大変な時期かもしれませんが、一番楽しい時です。
言葉の一つ一つが思い出深く、忘れてしまうのがもったいなくて
書き留めていた時期です(笑)
素敵な時間をたくさん過ごしてくださいね!
因みに我が息子はあっという間に21歳と19歳・・・
ご主人の痛みは想像はしてみても本人にしか分からない痛みだし、まして慢性となれば精神的にも肉体的にも非常な負担だと思います。
私事でなんですが、うちの旦那は慢性疲労症候群で(重症ではないですが)、子供のころから常に疲れと、体の節々や骨の痛みを患っています。医者に行ってもはっきりした原因もわからず、リウマチや繊維筋痛症も疑われましたが決定的な診断には至らず。毎日どこかしらに痛みがあるのが常で、長距離の移動や体にひどく負担がかかる時はコルチゾンを服用します。一日でいいから薬を服用せずともなんの痛みもない状態を味あわせてあげたいと思うけど難しい。
話がずれましたが、、、今回のお話読んでいてすごく心にじーんときました。これからもますます幸せな瞬間が訪れますように。
本当に、二人が無事に生まれてきてくれた事は、今でも信じ難い思いです。夫も十年近く失ってしまいましたが、子ども達がまだ大きくならないうちに間に合って、本当によかったです。
本当にあっと言う間なんでしょうね。
うちは大家さんの家の一角を借りて住んでいるのですが、入居当時に庭でお馬さんごっこをしていた子ども達が、もう今は家を出てしまっていて、光陰矢のごとしを実感させられます。
子どもの頃からというのは本当にお気の毒です。慢性の病気は本人も勿論つらいし、それを理解して支えなければいけない家族も大変ですよね。
penedescatさんもどうぞ余り無理なさらず、お二人にも幸せな瞬間が沢山ありますように。
時間って本当に凄いですね。
幸せそうなパン作りのお写真に、こちらまでニコニコ。
私も最近色々思うことがありましたが、この投稿を拝読して、私もまだまだやれる、できる……と、何だか元気を貰いました。
ありがとうございます(^^)
痛みの度合いって人に伝えるのが難しいから、ご本人は勿論、それを正確に知る事が出来ないご家族も辛いと察します。私の母が去年帯状疱疹を煩いました。それから慢性疼痛になる事もあると読んだので、母に痛みの事を聞いてみようと思います。離れて暮らしている私に心配をかけまいと、黙っている事が多いので。
写真から拝見するご主人の額と、兄こぐまちゃんの額、
よく似ているなと思いました。 :-) 素敵な写真ですね。
今から10年先も、20年先もお幸せであるように、
くまさん家の皆さんの御健康を心から祈っています。
そう仰って頂けると嬉しいです♪
夫には、失われた時間の分も今、子ども達と笑顔で楽しい時間を過ごして欲しいです。
有難うございます♪
いえいえ、私はまだまだ修行が足りなくて、ついガミガミ言って自己嫌悪に陥る事もままあるので、もっと修行をつまされてしまいそうです。
本当に、痛みの度合いは個人的なものですよね。つい較べて「そんなの大した事ないじゃない、我慢しなさいよ」と言いたくなるものですが、それが言えないのが痛みなのだと、つくづく思い知らされました。
Sachieさん御一家も、どうぞお体を大切に。
姫くまちゃんのちょこんとお座り、ぷくぷく腕、まだハゲ気味の頭が可愛過ぎます。あぁ触りたい・・・(←単なる赤ん坊フェチの変態おばさん)。いや兄くまちゃんも可愛いんですけど、私は三歳児は自宅で触り放題なので、赤ちゃんが懐かしくて。でも人様の赤ちゃんはいくら可愛くても「私の」赤ちゃんではないから、抱っこさせてもらっても、何かが違うんですよね。
くまさん夫婦がお子様方のチビちゃん時代をじっくり堪能し、10年後には長く苦しかったトンネルを夫婦揃って心穏やかに振り返れますように。
うふふ・・・それでも大分どでーんと大きくなってきて、生まれたてのくにゃくにゃからは遠のいてしまいました。赤ちゃんの時期って本当に短いですよね。私の体ではもうこれ以上産めないと思うので、今を大切に味わわねば、と思っています。
子供の頃は、漠然と「大きな幸せ」という状態がある、と思っていました。
でも、日常の小さな幸せがほんとうに嬉しさや安心感をもたらしてくれるのだなあ、と大人になった今は思います。
で、普段はそういうことも忘れがちですが、どくとるくまさんの記事でハッとしました。
居住まいを正して読みたくなる、丁寧に言葉を紡がれた記事もあり、
お役立ち情報もあり、読み応えたっぷりで、私のへっぽこブログとは、クジラとイワシの差ですー。うわわわ。
また、訪問させていただきます^^
いらっしゃいませ!
いぷしろんさんのブログ、ユーモアがあって、でもきちんと書かれていて、いつも楽しみに拝読しています。penedescatさんに感謝です。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
もちろん、病気になって大変なことも多いかと思います。でも、時間に流されてただ日常生活を送っていたら忘れてしまいがちな、健康でいることのありがたさや家族の大切さに気付かされたり、ちょっとしたことに幸せを感じることができたり。ネガティブなことだけではないんですよね。自分の考え方一つで、幸せな気分にもなるし落ち込むこともあるし。結局は、自分次第なのかなと思うようになりました。
くまさんも無理をなさらず、抱え込まず。旦那さんの病気がさらに良くなるといいですね。
本当にその通りですよね。
みっつぃさんも、その後お加減如何ですか。どうぞお体を大切に、ご家族で幸せな時間を送られますように。
伺ったころは、本当にまだ闇の途上、だったんだな~
と思うと、その中でたくさんおもてなししてもらい、
ありがたいことでした。くまさんもよくへこたれず、やってきたか…
と思うと、頭が下がります。
日々の平穏な暮らしこそ、このうえない幸せですよね。
また時間あるときにメールします
チロルも懐かしい~
そうねー、今振り返ってみると、まだまだだったんだなあ、と。チロルへ一緒に行けなかったものね。でも、私も当時はそんな事思っていなかったから、やっていけていたのかな。また遊びに来てね!
痛みは本当に辛いですね。私も痛みを経験し、続く痛みがこんなにも肉体的だけでなく精神的にもダメージを与えるものだとは思ってもみませんでした。
私の場合は一時的なもので、しかも激痛ではなかったにも関わらず、数ヶ月も繰り返されると最後はもうどんな痛みにも耐えられなくなってしまい、採血などの一瞬のちょっとした痛みですらもうだめで、恐怖でパニックのようになり、お医者さんにもよく迷惑をかけてしまったほどでした。
でもご主人は10年近くも痛みに苦しんでこられて、どれほどお辛かったことだろうと思います。支えてこられたどくとるくまさんも、どれほど苦しい思いをされたことだろうと思います。家族が痛みで苦しむ姿を見ることほど辛いことはないかもしれません。
でもそういった苦しい日々を乗り越えてこられたからこそ、今の穏やかな何気ない日々の幸せを何倍にも感じることができるのでしょうね。
今まで苦しんでこられた分、どくとるくまさんご一家にたくさんの喜びが訪れることを祈っています。
あたたかいお言葉有難うございます。
本当に、せめて子ども達が大人になるまでは、何とかこれ以上の状態を維持できるように頑張ります!
kotoriさんもそうだったのですか。「痛みは人格を破壊する」というの、本当にその通りだと思います。
実はこの事をブログに書くのは躊躇していたのですが、世の中にはまだまだきちんと疼痛治療を受けられていない疼痛患者が多く、モルヒネも非常にネガティヴに捉える人が多いので、「そういう病気があって、モルヒネによって普通の生活が送れている人もいる、という事を皆に知って欲しい」と夫自身が言ったので、ここに書きました。
慢性疼痛、初めて聞く病名で調べてしまいました。ときどきちらりと写っているこぐまちゃんとご主人さんの優しい表情からは、そんな傷みと暮らしているなんて想像もできませんでした。その傷みを抑える方法があるということ、覚えておこうと思います。私の周りにもひどい慢性のリュウマチや癌と戦っている人がいて、治療にはならないけれど辛さを和らげる方法としてマリファナを使っています。初めてカナダに来たときは、マリファナ=ドラッグ!という反応しかできなかったのですが、今はどんな薬で対処できない症状でもマリファナを使用することでなんとか生活できることがあるんだと学びました。友人も、一時的でも傷みから解放されて、正常な気持ちを保てるようになったって。
こぐまちゃんと妹くまちゃんの無邪気な笑顔も、傷みを和らげるお薬ですね。たくさんの笑顔に溢れますように。祈っています。
皆さんのコメントから慢性疼痛がそこまで知られていない病気なのだと知り、驚きました。という事は、痛みに苦しみながらもそれが病気だと思わず、従ってきちんとした疼痛治療を受けずにいる人も、私が考えている以上に多いのでしょうね。酷い事です。
カナダでは疼痛治療にマリファナを使えるのですか!ドイツはその点まだまだ保守的で、モルヒネがせいぜい、それもかなり根強い偏見との戦いです。
同じドイツに住んでいてネットでつながっているのも、貴重なことですよね。
本当に、そうですね。
たまに弱音を吐いても皆さんからコメントで励ましてもらったりして、歩き続けてこられたんだなあ、と思います。
懐かしい記事に、コメント有難うございます。
それは大変でしたね。
それでは、詳しい話しは、また。