人肉 |
(はい、今日の記事はグロいですよ。苦手な人は、さあ、帰った、帰った。
タイトルに釣られた猟奇趣味の人も、さあ、帰った、帰った。)
私には、お肉が食べられなくなった時期があります。
医学を始め、解剖学を学び、
講義で「豚の心臓は人間の心臓とよく似ていますから、お肉屋さんで分けてもらって、解剖してみるといいですよ」と言われた。
「むむ・・・肉屋で・・・解剖した後は捨てずともお料理にも使えるのか・・・」
と考えたあたりから、ちょっとおかしくなった。
それから、遺体での解剖実習が始まり、更に拍車をかけた。
お皿の上の肉の構造が、わかってしまうようになった。
そもそも欧米人の体は、私達農耕民族から見ると食傷気味になりそうな位「肉々しい」感じがある。
「食べる肉」と「生きている肉」の境界線が、すーっと薄まってしまった感じで、
一時的に感覚が混乱してしまい、生理的に肉食を受け付けなくなってしまったのです。
さて。
遂に、やっと、噛み割った歯の冠(クラウン・被せ)を作って貰いました。
1年近くもの間、噛み合せを修正し続け、理学療法に通ったりマウスピースをつけたりして顎の筋肉を柔らかくして、準備をしていた訳です。
完璧主義の歯医者さんは、「まだ、もうちょっと顎の筋肉が硬いから、1月迄待ちましょう」と言っていたのだけれど、11月は仕事が少し楽で私としてはリラックスできていたし、定期的に壊れる仮の被せにうんざりしていたので、「これ以上の改善は期待できませんから、もうやって下さい」と、押し切ってしまった。
朝8時からお昼過ぎまで、患者は私一人だけ。
4、5時間も掛かる、大治療でした。
冠は深いので、冠を作るには、歯茎の肉をどけなければならない。
普通に切ると勿論大出血するので、電気メスを使います。
電気メスで肉を焼く臭いは、外科で随分嗅いで慣れていたのですが、
それが自分の口の中で行われるというのは、また全くの別物でした。
(焼き切る訳ですから、普通の焼肉のこんがりの匂いではなく、髪の毛を焼くような臭いです。)
臭いと味が、口中に広がり、喉に広がり、鼻に抜ける。
人肉です。共食いどころか、私自身の肉です。
これは、本当に、たまらない。
魯迅の人血饅頭など、可愛いものに思える。
ウォッカでも激辛カレーでもいいから、流し込んで消してくれないかと思う程でした。
臭いや味は、記憶に残りかねない。
治療後で既に、ちょっと思い出すだけで、ぶわーっと口と鼻に甦る。
晩御飯のハムの事を考えただけで、おえっとなる。
こういう体の記憶は、危ない。また、お肉が食べられなくなってしまいかねない。
だから、記憶がしっかり焼き付く前に、消し去ってしまわなければならない。
・・・という訳で、前々回の記事の写真です。
麻酔でまだ半分麻痺している口で、
真昼間から、ワインをガンガン飲みました。
(夫は大喜びで付き合ってくれました。あはは。)
お陰で口と鼻の記憶は消えて、はあ、ヤレヤレ。
アルコールの力って、凄いわぁ(笑)。
せめて、写真はグロくないものを。
どんよりとした朝の空は、何ともドイツの冬らしい。
でも、今年は暖かく、まだ雪雲ではありません。
今日主人が帰宅したら、いつもより優しい気持ちになろう。もうちょっとこの国で頑張って見よう。このブログに出会えてよかったです。ありがとう。
そう言って頂けると、ブロガー冥利に尽きます。
外国暮らしはストレスも多いですが、その国にしかない長所も必ずある訳で、それを一つずつ集めて楽しめるといいですね。
優しい気持ちは伝染するんですよ~♪
だから、Tiffanyさんが始められたら、きっとご家族も。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
解剖、実際見たらくまさんのようにショックを受けそうですが、自分の身体のことでもあるので興味はあります。生物学を学べる環境にいた頃はあまり興味がなかったのですが、今更もっとしっかり学んでおけば良かったと思っています。生きるって不思議なことばかりです。
駄目ですよー、苦手な人がこの記事を読んでは。
ものすごく太い神経なんて、失礼だわ。ぷん。(いえ、冗談です。あはは。)
私の母が、september30さんのように全く血を見られないものですから、私はかなり小さい頃から「お母さんは見たらあかん!」と言って物陰で自分の怪我の手当てをしていたそうで(自分では覚えていないのですが)、それで鍛えられたのかも知れません。
でも、自分の肉を味わうのは、本当にげえーっでした。
解剖学は、教授の導入がよかった事もあり、ショックは全くありませんでした。
人体は美しいですし、敬意をもって解剖していましたから。
ただ、お皿の上にのっているものが、それらと同じ構造をもっている事が、当時はどうも受け付けられなかったのです。
それがね・・・クラウンはまだ被っていないのですよ。
型をとって仮の被せをしただけで、その時間なのです(泣)。
でも、1年近く引き摺った治療にようやく終わりが見えて、やれやれです。
私は歯医者なのですが,自分が解剖実習を受けていた十数年前は,しばらくスクランブルエッグが食べられませんでした.卒後数年,病理解剖をしていた頃は,ミノの湯引きが食べられませんでした.(見た目と臭いの問題です.ちなみに歯医者でも一応こういうことをするのです.)
電気メスで歯茎を切開するときはバキュームで完全に臭いを消すようにしているのですが,ドイツではどうなのでしょうか.バキュームしても漏れてくるくらい強烈でしたか?
これからも更新を楽しみにしています.お忙しいことと存じますが,お体ご自愛ください.
まあまあ、そんな昔話まで、有難うございます。
若気の至りが沢山あって恥ずかしいので、もう消そうと思いつつ。
スクランブルエッグ・・・あはは。私はそちらには連想がまわりませんでした。
ミノの湯引きは食べた事がないのですが、それもわかる気がします。
矢張り、「知っている臭い」だから、とても敏感なのだと思います。
ついでに、されている状態や、そこから流れ出ているものなども、目に浮かびましたし・・・。
頑張ってバキュームしてくれていたのですけれど。とほほ。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
口腔内だと上咽頭を抜けてダイレクトに匂いが
届いちゃいますよね。
似た様な事が耳鼻科でもあるんですよ。アレルギー性鼻炎の時のレザー治療で鼻粘膜照射する時のあの匂い。幾ら治療のためとは言っても、感覚的に、『自分の粘膜の焼けている匂い』って考えちゃうと、生理的に来ちゃいますよね。患者さんには申し訳ない事です。匂いは視覚と負けず劣らず、ダメージを与えます。もう、お加減は宜しいのでしょうか?
これからそちらもお忙しいと存じます。どうぞお体に気を付けられてご活躍下さいね!また、参ります。
鼻粘膜を焼くのも、これまたきつそうですね。うう・・・。
耳鼻科では、耳の中の手術が「うるさい」のも大問題だと、学生の時に聞きました。
お陰様で大分よくなりまして、今週には本当の冠が入る予定です。
murmur1さんのブログ、いつももの凄い御馳走で、気が引けて何となくコメントできずにいます。すみません。
私は元ナ-スなのですが、実習での解剖を思い出しました。(ナ-スはドクタ-のお残りなので、そこまで生生しくなかったのですが)
でも、あの体験は私に力をくれたと思っています。
私にとっても解剖実習は、学生生活の中でとても大事な思い出になっています。
学期末には、献体なさった方々の遺族を招待して、感謝の慰霊ミサがあり、私も合唱隊として参加しました。
いえいえ。愚痴でも何でも、ご遠慮なく。
いろいろ大変でしょうけれど、無理なさらず、お体を大切に。